スワヒリ亭こゆう

BAD LANDS バッド・ランズのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)
4.8
想像以上に面白すぎました‼︎
凄い好きなノワール映画でした。
『BAD LANDS』のタイトルは悪い土地という訳になるんですけど、映画の舞台は大阪の西成区。
歌舞伎町などの繁華街とはまた違う意味でデンジャラスゾーンで度々、メディアに取り上げられています。日雇い労働者とかが暮らしているドヤ街のイメージがあります。
その西成で主演・安藤さくらが演じるのは特殊詐欺グループのネリ。
特殊詐欺グループの内実を描きつつ、ネリと弟のジョー(山田涼介)が危険地帯に踏み込んでいくストーリーが妖しく輝いて、めちゃくちゃカッコ良かった。
原田眞人監督の『ヘルドッグス』から『BAD LANDS』へと移行しても面白さは変わらずに監督の凄みが伝わってきました。ノワールをここまで邪悪で危険な映画に撮れる監督が日本にもいるんだというのが嬉しく思います。
下手にシャブや大麻に逃げがちなノワール映画。
海外でもやりがちだけど、そこに手を出さずに悪い事を描いてるのが良いです。

特殊詐欺の被害に遭った人への配慮とか、作品に何の足しにもならない配慮ばかり気にする時代。
作品を全て観れば特殊詐欺グループを推奨してるわけではないですからね。
映画をちゃんと観れば文句ない筈です。
犯罪者の立場で描いてるのが、より内情が分かります。
そしてその犯罪に関わってる人達が底辺を這いずり回っている。必死に底から抜け出そうとしてる。
それが行き詰まり本作のストーリーがどんどん加速していくのが堪らなく面白いです。

ほとんど完璧ではあるんですけど、少しセリフが聞き取りにくかったです。
恐らく、早いテンポで映画を進める為に早口でセリフを話しているからだと思いました。
デヴィッド・フィンチャー監督が『ソーシャル・ネットワーク』でやった演出です。
普通にセリフを話すと映画の尺が140分と少しでは収まらなかったんでしょう。
刑事のセリフ、特に『VIVANT』のピヨでお馴染みの俳優さんなんかは何を言ってるか殆ど分からない。ストーリー流れ、会話の前後で自分なりに組み立てれば良いので、問題としてはそこまで大きくないのがせめてもの救いでしょうかね🤔

安藤さくらさんのが犯罪者というのは『万引き家族』のハートフルな犯罪とは違い、がっつり組織の悪の歯車のひとつとして存在している。それに弟ジョーが加わって更に悪に染まっていく。
安藤さくらさんの柔らかいイメージがエッジが効いたノワールの主人公になり、クールでした。
とっても良い映画でした。