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哀れなるものたちのhorryのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
よかったです。音楽と衣装、セットが迫力あるので映画館で見るべき作品。

女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツとセクシュアル・ヘルス/ライツがテーマでそれを成長譚にのせてます。My body my choiceというスローガンがあるけれど、それがいかに困難かということを見せてくれる作品でした。

フェミニズムのテーマを巨大なバジェットでやるという意味では『バービー』と同じで、成長譚であることや、男性キャラクターの立ち位置も似てたりする。何を描くかは似ていても、どのように描くかによって見え方がこれだけ違うのは面白い。

もう1つ面白かったこと。
Youtubeにある「Born sexy Yesterday」というとても興味深い映画批評からこの映画を考えていました。
「Born sexy Yesterday」というのは、SF作品(日本でいえば異次元世界とか転生ものとか)でよく見られるトロープを指したもの。別の惑星からやってきた女性は、その社会のことを知らず言葉も理解できない子どものような存在だけど、成熟した身体と性的魅力を持っている。彼女が出会った男性は特に取り柄のない普通の男性なのだけど、彼女にとっては何もかもを知っていて導いてくれる存在となる。
「Born sexy Yesterday」が批判されるべきなのは、無知な女性をセクシーだと描くことは一般的に非難を受けるが、SF設定によって、そうした非難を受けることなく、男性が無知な女性を導くという権力関係を楽しめる構造にしている点とされる。

本作では、子どもの脳を持つベラは成熟した身体を持っていて、まさに「Born sexy Yesterday」状態。その後、知性を身に着けていくのだけど、彼女の知性は多くの男性にとってセクシーなものと映らない。「Born sexy Yesterday」というトロープを皮肉として扱い、その後を描いている点もとても興味深かったです。
知性が社会主義と解剖学であるというのも、非常にフェミニズム的だし。
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