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哀れなるものたちのSayoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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"良識"にがんじがらめにならなければ、人間はLESS POORなTHINGSでいられるはずなのにね。戦争も、貧困も、暴力も、差別も、搾取も、それに尽きるのだろう。でもこれの解体の無理さにも自覚的で、でもそれでも闘争するという態度の映画だった。
フェミニズム文脈ももちろんしっかりあるんだけど、そこはもうわざわざこの映画で言及することでもないというか、ダンカンというダークバージョンKENみたいなのがいなくてもじゅうぶん成立する物語だと思う。
ベラは、ASD傾向(ここでは、社会通念や暗黙の了解を拒否するという限定的な意味において)のある、愛に満ちた人間のようにみえる。あらゆる"良識"から切り離された人間は、赤子が理不尽に死ぬ光景のおぞましさに耐えることができない。そのことの、驚くべき正常さ。本当に、異常なのは、だれですか?
自殺した彼女の身体は、性的な快楽のほかに、それまでの人生での苦痛をも記憶しているだろう。ため息をついたこと、動悸がしたこと、震えたことなど、すべて。そんなことをエマ・ストーンの演技から想像した。
生の途方もない魅惑と絶望を知り、それでもなお生き続けるという答えを、このままの世界で人間は出し続けうるだろうか?この絶望に対して何ができるか、ベラは医者になることをその一つとして選んだが。
衣装が最高なのにそれ以外のことを書き連ねてしまった。
個人的には、「会えて嬉チーズ」で笑いあって客と親密な関係を築くシーンが特にお気に入りだった。
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