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定住のdm10foreverのレビュー・感想・評価

定住(2022年製作の映画)
3.6
【理由】

先日『JICA横浜×ショートショート「ショートフィルムトリップto ケニア」』という企画でYoutubeにて無料配信されたショートフィルム。

干ばつによって干上がった土地に暮らす人々の苦悩と、それでもその土地に暮らし続ける理由について見つめる「時代の断片」。

彼らは水を求めて一日が終わる。
ようやく水を手に入れて帰ってくるころにはヘトヘトになって、そのまま眠ってしまうこともある。
でも、また直ぐ次の日になれば水が必要になって、1日かけて水を汲みに行く。

それならば、いっそのこと水がある町へ移住すれば良いのではないか?

しかし、彼らはここを動かない。
それは、そこに暮らす人々それぞれに理由があるから。

彼らは決してここの生活が満ち足りているとは思っていない。
しかし、町には常に「争いごと」が付きまとう。
結果的に問題があまりにも多すぎて、それらが人々を苦しめるということが分かっているから。

「だからここが良いんだ。何もないから」

男は遠い目をしながら呟く。

ここ最近の異常気象は、真っ先に彼らのような「何もない人々」から生活の糧を奪っていく。
水が枯れ、土は乾き、草木は色を失い、動物たちも死に絶える。
それでも彼らは町へ行こうとはしない。
「何もない幸せ」を捨ててまで、町で「何かを得たい」という欲をもたないから。

「生きる」という極限状況においても、彼らは人間らしく、自分らしくあることを選ぶ。

こういう作品を観て「日本は恵まれているな」っていう感想も勿論あるだろうし、だったら「水が豊富な土地に移住すればいいのに」っていう意見もあると思う。

日本人的な感覚でいえば「貧しい」という暮らしだし、実際問題「足りている生活」とはお世辞にもいえる状況にもない。
なのに、彼らは求めない。

清貧?
潔い生き方?

必ずしもそれが正しいことかどうかはわからないし、実際、子供たちの未来を考えれば「選択肢」は多いに越したことはないだろう。

それでも彼らは、争い、奪い合うことを嫌って、自ら「ない生活」を選ぶ。

よく考えてみれば、日本だって殆ど資源を持たない国だ。
こんな小さな国の中で、人々がギスギスしながら、争い、奪い合い、蹴落としながら生きている。

案外、争いというものから距離を置いて生きるという選択をするということは、こういうことなのかもしれないな・・・と、モニター越しに遠い目をした僕が覗き込んでいた。


・・・余談。
実は『JICA横浜×ショートショート「ショートフィルムトリップto ケニア」』ではもう一本「だれもが皆」というショートフィルムも配信される予定だったのですが、開始数分で映像が切断され、暫くすると「Youtubeの規約に抵触する恐れが・・・」みたいな文字が出てきた。
・・・そんなエグいお話でもなかったような気もしたんだけどなぁ。
っていうか、もっとエグいのガンガン流しているやないですかぁ・・と心の中では一応突っこんでおく。
主催者のHPでもやっぱりそのようなことは書かれていて、近いうちにアーカイブで見れるようにはしますとか書いてあったけど・・・・大丈夫?

ってか、Youtubeの基準がようわからん・・・。
これよりも「見るに堪えないYoutuberたち」の粛清のほうが先だと思いますが。
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