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先生!口裂け女です!のドントのレビュー・感想・評価

先生!口裂け女です!(2023年製作の映画)
3.5
 2023年。ナイス。ナイス快作。不良を自認するヘタレの高校生チームは盗んだバイクを半グレに売って小銭を稼いでいた。だがある日パクった原チャリの持ち主は……口裂け女だった! 追われる主人公! 走る口裂け女! 女子高生失踪の真相は! 人が20人くらい死ぬアクションホラーサスペンス青春物語。
 優しい。優しい映画だなと思った。口裂け女と言えば70年代末に日本を席巻した「怪人」であり、当時「都市伝説」という単語はこの世に存在しなかったので、いわば都市伝説以前の真のレジェンドとも言える存在である。45年間やれ子供を殺すとか病院から逃げてきた狂人だとか言われてきた彼女をこういう形で描くということに、何よりジーンと来てしまった。まぁ人は殺すけど……
 同時に、この一発ネタに寄りかかることなく、主人公側のお話もちゃんとやっている点にも好感を抱いた。必ずしも成功しているとは言わないけれど、半端な不良ぶりとかギャルの明るさとか半グレの皆さんの質感とか、そういうのが生き生きとしている。後半部、特に口裂け女さん周りにもうちょいカンナとヤスリをかけて、チョケる部分を消して熱い燃えに徹していればな、と脚本に深い深いもったいなさを感じることしきりだけれども、これも全体がそれなりにイケている故の苦言である。
 悩ましさを覚えつつもなお、矢庭にカッコいい最後の乱戦を観ていたら謎の涙が出そうになった。アレだね、文脈が仮面ライダーなんだね。覆面しててライダーだから仮面ライダーですよ。腕とか足とかモゲてるのでオーバーキルだからダークヒーローだね。そういう痛快さがあった。
 青春物語、サスペンス、遊び、シリアルキラー、アクション、ヒューマンドラマを80分に詰め込んでやろうとする心意気やよし。アクションとかグロで一点突破しようとする映画も悪くないけれど、太く強いものに仕立てようとする気概に打たれた。あと何気に「会話シーンを単調な切り返しで撮る」などの「他の要素に気が向いているので普通のシーンがなおざりになる」みたいなのが皆無なのも好印象。キャストもみんないい感じなので、10%ほど脚本をリライトし、音声も撮り直して(エクストリームは毎作台詞が聞き取れない)、追加撮影した完全版の制作を希望します。
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