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湖の女たちのsingerのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
3.5
タイトルを見た時から、湖の街に住む自分は、
なんか観なくてはいけない気になっていた。
でも。
原作、吉田修一。
監督、大森立嗣。
141分。
一筋縄では行かない作品だろうなぁと予想はしていた。
そして、まさにその通りの作品だったなぁと思いました。

作品自体は、ミステリーの部分を基本線としながら、
ヒューマンドラマというか、人間の深い心理の奥底に迫って行きながら、
社会の闇の部分を対比させながら描いていくという、とても見応えのあるものだったと思います。

しかし、キャスト陣の演技が、皆、物凄かった。

こんな、福士蒼汰くんは見た事ない。
それまでの爽やかなイメージを全部覆すくらいの意志で、主演として、役柄にぶつかっている、そんな役者精神を感じる演技でした。

浅野忠信さん。
人生で背負ってきたものの巨大さ。
そして、その反動から形成された、正義とも悪とも言えない、歪な人間性を、
物凄い演技で体現されていました。
言葉、台詞の再現度が半端無い。
関西弁っていうより、これは滋賀の人だと、滋賀で育った自分が感じるくらい、
その土地の人へのアプローチが見事だったと思いました。

松本まりかさん。
もう、ただひたすらに妖艶でした。
身体を張った演技とか、そんな言葉では表現し切れないくらい、
その眼に深い、深い儚さが溢れていて。
それでも、外から見ると美しく見えてしまう。
そんな妖しい力に溢れていたと思います。

穂志もえかさん。
短い出演ながら、未来を真っ直ぐに見据えた、
力強い瞳が、とても印象に残りました。
作品の中を貫く、一筋のの光でもあったなぁ。

福地桃子さん。
作品の中で、唯一と言って良い位の、人間の良心の部分を背負っていく役柄。
それでも、抗えないものに立ち向かって行く、その真っ直ぐさが、演技から伝わってきました。
浅野忠信さん、三田佳子さんと向かい合うシーンが特に印象的でした。

財前直見さん。
凄かった。
ひとりの人が、嘘や矛盾に捻じ曲げられてゆく。
そこから生まれる、無念さや、怒りや、悲しみや。
その全てが真に迫っていたと思う。
本当、凄かった。

そんなキャスト陣の演技を見るだけでも、
とても価値のある作品だったと思います。

そして、世武裕子さんの音楽。
湖の街の物語だから、そこで育った世武さんの音楽なのが、とても感慨深かったです。

作品の舞台となる琵琶湖。
その大きな湖のある街に住んでいて、
普段は穏やかで、美しく、母のような大きさを感じさせる、その湖の風情。
でも、その反面、
色んな人の裏側や、闇の部分も、この湖面に映ってきていたんだなぁと、
そんな一面も感じる、湖面の映像も、とても印象に残りました。
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