よん

湖の女たちのよんのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
3.4
福士蒼汰の演技力に対する評価がずっと昔のキラキラ映画のクサ演技で止まっていた身としては、その快演ぶりに終始信じられない思いだった。正しさへの執着が膿になって出た静かな狂気、見栄と寂しさと恐怖心、愛し愛されたいという純粋な願い、世界と自分への憎悪…抱えきれない「生きる」ことの重さに押しつぶされているこの青年を、福士蒼汰が完全に演じていることを知れただけで、140分座っていたおつりが来る。さすがに何かしらの賞をあげてやってくれや

物語は、吉田修一らしさ全開のサスペンスミステリ。片田舎の老人ホームで起こった殺人事件が、現代日本の悪につながり、いつの間にか時を超えさらに昔につながる悪を暴き出す。
結局その時の「正しさ」なんて、その時代の審査員が「正しい」といったというそれだけであって、私たちが苦しめられているそれに正解なんてないんだと、出口のない世界でのたうち回る登場人物たちと一緒になってため息をつく。湖ってなんか、優しくて牧歌的なシンボルとして描かれることの方が多い気がするけど、「私たちはどこにもいけないんだ」と確かめるためにそこに水が溜まっているんたと思うと、その湿気が画面の奥からこちらまで漂ってくるような気がするから不思議だな。

映画としては、正直終盤がとっちらかり、最後はイメージビデオなのか?という曖昧さでフェードアウトしてしまった感が否めない点が残念であり、そこはクライム、ミステリを観にきた客に土産を渡しても良かったのではないかと思うところはあるが、それでも福士蒼汰と松本まりか、福地桃子の代表作の1つには必ずなるだろうと思う作品であった。
研音は役者の幅が広くなっていて期待が持てますね。
よん

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