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瞳をとじてのsonozyのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
5.0
ビクトル・エリセ監督による31年ぶりという長編新作。
長め&地味めながら素晴らしかった。
さらに、監督の長編デビュー作『ミツバチのささやき(1973)』の主人公アナ・トレントが、アナという女性役で登場するのも注目。

冒頭は、パリ近郊の「悲しき王」と名づけられた屋敷でのシーン。
中国人執事と暮らす余命短い老人レヴィが、フランクという男を呼びつけ、上海にいるはずの14歳になる娘ジュディスを探して連れてきて欲しいと頼み、引き受けたフランクは屋敷を去る・・

これはミゲルという監督による『別れのまなざし』という劇中劇のワンシーンで、このフランクを演じた役者フリオが撮影途中の1990年に突然失踪し、死亡と推定されたが遺体は発見されていないというナレーションが入る。








一転、2012年のマドリード。『未解決事件』というテレビ番組で、フリオの失踪を取り上げるという打診を受けたミゲルが出演を決意し、番組ホストのマルタと会う。

マルタの取材を受け、フリオを知る数少ない人物たち、当時の編集担当マックス、ミゲル(とフリオ)の彼女だったローラ、そして、アナ・トレント演じるフリオの娘アナとの再会・過去と向き合うミゲルの対話シーンが静かに展開しますが、後半に向けて物語が大きく動きます。

象徴的に出てくる前後を向いた二つの頭を持つヤヌス神の胸像(過去と未来。内面と外面...の象徴)。
ミゲルの漁村での質素な暮らしぶり。
未完の『別れのまなざし』を含む昔の映画フィルムの倉庫番をしているマックス。

ミゲル(マノロ・ソロ)とフリオ(ホセ・コロナド)を始めとするキャストの演技も素晴らしく、まさに円熟味のある繊細で詩情豊かな映像と音使いに静かに引き込まれていきます。

特に後半約20分間〜ラストシーンに感動。
このタイトルも沁みます。

※印象的なジャケ写の少女は劇中劇『別れのまなざし』の娘ジュディス。

(余談)
日本語のアイテム(「三段峡ホテル」のマッチ)が出てきて、ん?となりました。
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