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愛にイナズマのプレコップのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
1.8
いろいろとセコい映画。

業界人を不快に描くことに固執しすぎた前半ははっきり言って苦痛。

後半は「東京暮色」的な家庭内のゴタゴタを描いたり、その小津安二郎のような画作りもあってそれなりに楽しかったが、魚料理店のくだりでまたテンションが下がる。

飲食店であんなにデカい声で犯罪行為を威張りまくるのは、普通に考えて「ありえない」と思うけど、三浦貴大演じる助監督・荒川の描き方から観客のその感覚を封じ込めている。これは悪い意味でズルく、荒川のキャラクターは本作の不自然な演出やセリフ回し、表面的な問題提起のスケープゴートにしかなっていない。実際、頭でっかちなキャラクター造形の荒川と花子の会話シーンは議論が噛み合っていなくて、面白みがない。

松岡茉優は本当に素晴らしく、言葉を噛む演技には驚嘆した。ずっと漂っている窪田正孝の異物感もよかっただけに、先述の演出的な姑息さが鼻についた。

中途半端に社会派を気取ったせいで純粋にエンターテイメントとして全く楽しくなかったような…それっぽいオフビート感でごまかしているだけに感じる。
屠場を死のシンボルとして描く手法は「愛について、東京」でもやっていたが、浅はかな魂胆が見え見えでいずれも全く上手くいっていない。っていうかそれ以上に酷い。
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