社会のダストダス

ドラキュラ/デメテル号最期の航海の社会のダストダスのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

少し前の『ブギーマン』に似た、真っ暗で、狭苦しい場所で、きもかわクリーチャーが暴れる話。ついでに両作品とも印象的な役どころで、ポルカドットマンが活躍。劇場をスルーされ配信になってしまうホラー作品も最近あったなか、先ほどの『ブギーマン』や本作は地味ながら劇場映えする作品だと思うので、大きなスクリーンで観られたことを喜びたい。ただ後半、光の明滅が激しすぎるシーンがあり珍しく気分悪くなった。

最近は暗い映画を観ることが多いので、できるだけ明るいレビューにしたいと思います。ちなみに最初、デメテル号をデリヘル号と見間違えて興味をもったというのは内緒である。

主な登場人物:
クレメンス医師(コーリー・ホーキンス)… エーゲ海のええ外科医、当時としては稀な黒人キャリア。
アナ(アイスリング・フランシオシ)… 密航者、ドラキュラと蜜月な関係。
エリオット船長(リーアム・カニンガム)… デメテル号船長、バイオの日記みたいな航海日誌の著者。
ヴォイチェク(デイビッド・ダストマルチャン)… 航海士、すぐに海に捨てたくなる環境テロリスト。
トビー(ウディ・ノーマン)… 船長の孫で生き物係、可愛い。
ドラキュラ(ハビエル・ボテット)… 吸血鬼、いつも具合悪そうにうずくまってて可哀そう。

クレメンス医師はケンブリッジ大学卒業の秀才ながら黒人であるため、どこにも雇ってもらえず、エーゲ海でええ外科医をやっている。ロンドン行きのデメテル号の仕事に就くも、木箱から女の人が見つかったり食用の家畜が惨殺されたりと波乱含み。ゲン担ぎを大事にする船乗りたちはのっけからとんでもない死亡フラグが立ったことに戦慄。そして船で不審死や失踪が相次ぐことになる。

キャストは全体的にそれほど知名度高くないけど、どこかで見たことある人が多い。自分の好きな映画でいえばアナ役アイスリング・フランシオシは『ナイチンゲール』と同様に黒人とバディを組む復讐者。ウディ・ノーマンは『カモン・カモン』でホアキンおじさんと共演する少年。ハビエル・ボテットは『死霊館 エンフィールド事件』のへそ曲がり男などのいろんな化け物の中の人、あれがCGじゃなくて実物なのは軽く衝撃だった。

限られたシチュエーションで展開されていくなか、尺もほぼ2時間とこの手の作品としては結構贅沢に使っている。少しドラキュラさんの登場が早かった気がしないでもない。割と序盤から船底を動き回っているが、体育座りで唸っている姿は船酔いでアンハッピーな気分になっているようにしか見えなかったので、むしろ早く鉄分を補給してほしい気持ちにさせられる。

ドラキュラ伯爵も本作では、過酷な航海を乗り切るため動物や汚いオッサンを口にすることを余儀なくされる。日中暗い船底に一人きりで娯楽も無い為か、人を襲うときに明確な悪意を感じさせるような演出も良い。襲った相手の何人かは海に捨てているのに、そのままにした人もいるのは死ぬほど暇だったからだと思う、この状況で眷属を増やしても自分の喰いぶちが減るだけのはずなので。

奇しくも先月公開の『ブギーマン』の怪物と似たような特徴が多いドラキュラさん。暗いなかでしか行動できなかったり、相手の言葉をオウムのように繰り返したり、どちらの作品でもポルカドットマンを殺したり、全貌が映ると少し貧相な見た目なのも愛おしい。続編がありそうなラストなので日影者の同志として、彼がどんな社交術を身に着けていくのか見守りたい。