コマミー

Winter boyのコマミーのレビュー・感想・評価

Winter boy(2022年製作の映画)
3.6
【17歳の喪失】



※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞





「美しいひと」や「今宵、212号室で」などの"クリストフ・オノレ"監督が、自身の経験を元にした半自伝的作品を作り上げた。

"父の事故死"を期に、揺れ動く主人公"リュカ"とリュカの"母"、そしてリュカの"兄"の"喪失感"そしてそこからの"解放"までを描く物語だ。

17歳の少年の"繊細な衝動"が全編を通して織り込まれており、この内の半分を監督が経験をしたならば、本当に衝撃的だし、監督の今までの作品の描き方にも結構表れているように感じた。監督の作品を見るたびに、私が複雑な心境に襲われる理由が、本作でやっと分かった気がする。
私は正直、リュカや監督のような経験はしてない…いやまぁ、似たような経験はしたが、この頃の心情の変化というのは確かに極端で、そして繊細なのだ。尊敬する人や心から愛していた人が命を落としたならば、尚更だろう。しかし、また"新たな出会い"によって、それが徐々に和らいでいくのも否めない。それが"リリオ"との出会いだろう。まさに縛られた心を解くような勢いの恋…それがそこにあった。

主人公リュカを演じた"ポール・キルヒャー"が、精霊かってくらい美しい。なんとこのポール君は、「ふたりのベロニカ」や「トリコロール」三部作などの"イレーヌ・ジャコブを母"に持つ青年なのだ。確かに面影がある。てか似すぎだ。このポール君が、全編を通して観客を魅了しており、このポール君を目的に観に行っても良いほど、美少年に相応しかった。
脇を固める母役である大女優"ジュリエット・ビノシュ"の優しい表情もとても良かった。

オノレ監督は、ラブロマンスとしての監督というイメージだったが、人間の繊細な心情を描くドラマ映画の監督としても本作で一気に価値が上がったなと感じた。
そして本作から新たなフランスの次世代のスターを叩き出せた。ポール・キルヒャーは、今後の活躍が期待できる、2世のスターである。
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