ペコ

枯れ葉のペコのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.4
まるでアキ監督の過去作から時が止まったままかのような、なんとも心地良いノスタルジー。

ラジオから流れるウクライナのニュース(と、唐突に差し込まれる盟友ジム・ジャームッシュのデッドドントダイ・・・笑)だけが、かろうじて現代が舞台であることを示していますが、それ以外は本当に、旧作のリバイバル上映を観ているかのような錯覚すら憶えます。

マッチ工場の少女の劇中でも天安門事件のラジオが流れますが、いつの時代も世界の暗いニュースの裏では人々の小さくてささやかな営みが繰り返されている、それが監督なりの映画を通じた人間讃歌のメッセージなのかもしれません。
(酒好きにはツラい断酒映画ってことや、カラオケ王は本当に歌上手いってことでいいの…?それとも監督のいつものユーモア要素?とかのお馴染みのオフビート感ももちろん健在でした)
奇しくも、同じく小津安二郎フォロワーと言われるヴィムヴェンダース作品と同時期に新作を観れるという貴重な機会でしたが、あちらは現代的なテーマへのアップデートも強く見られ、片や本作は昔ながらの撮り方ということで、比較しながら観るのもまた味わい深いものでした。

ちなみに、自分の観た回では客席は満席でした。映画配信時代、わざわざ劇場へ足を運ぶ必要がある中で、こういう作品を選ぶ人も沢山いるという事自体が素敵なことですね!
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