くまねこさん

枯れ葉のくまねこさんのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.6
「枯れ葉」角川シネマ有楽町で鑑賞。新年の劇場鑑賞1本目。初のアキ・カウリスマキ監督、最新作にして5年ぶりの復帰作。

フィンランドの首都ヘルシンキ。理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながら工事現場で働く労働者ホラッパはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれあう。不運な偶然と過酷な現実が、2人をささやかな幸福から遠ざけてしまうストーリー。

一見、社会底辺の労働者たちのラブストーリーだが、静かな反戦映画にも見える。

古いラジオから流れるウクライナ侵攻のニュース、部屋のカレンダーから実は現在の時代設定である事を知る。

俳優たちの感情のない棒読み演技は、社会に絶望し、社会の底辺で感情を失いながら苦しくも生きる人間の到達点なのか。
それとも、いつ来るか分からぬロシアからの攻撃に怯える表情なのか…。(フィンランドは1939年にも冬戦争で攻撃されてる過去がある)

初デートで観る「デッド・ドント・ダイ」に苦笑。ゾンビ映画なのかい。鑑賞後のアンサが人生で1番笑ったって感想が可笑しい。

フィンランドの女性ユニット、マウステテュトットの無表情な演奏と歌唱がなぜかジワる。

主人公アンサが飼うことになるワンコの名前は監督が敬愛するチャップリンから由来しているらしい。電話に出てとアンサに言われるワンコが可愛いかった。

小さな希望が見えるラストが良かった。イヴ・モンタンのシャンソンの名曲「枯葉」がココロにしみじみ沁みる。いい映画を観た。