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落下の解剖学のはまたにのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
心に決める。

弁護士芸人こたけ正義感のゲーム実況動画(逆転裁判)に一時期ハマってたから中盤以降の痴情のもつれ、感情面でのあからさまな誘導には「裁判ってそういうとこでは判断しないんよね」という気持ちで臨めたものの、法廷モノ、裁判モノでありながら異議あり! の爽快感でもお涙頂戴でもなく、多少の割り切れない感を含めた「そうかあ」に着地させるのは意外性があってよかった。
(中東の法廷映画の割り切れなさはバックグラウンドに政治や民族の問題があるからだけど、これはそれとは別)

その意外性というか、あ、人間ドラマだったんかい感が求めていたものだったかどうかによって評価が分かれるところだろうけど、個人的にはまさかの新事実とそこから揺れ動くゴリゴリの裁判モノも見たかったというのが正直なところ。

ただ上手いなと思ったのは、あの男女の諍いは一般的には男女が逆。というところ。

男が家庭を顧みず仕事だけして、女が私だって働くことで自己実現したいのに犠牲を強いられてばっかり! となるのが常套。ということは、この醜い喧嘩を見ながら「このクソ嫁なんやねん、ムカつくわ〜」と思っちゃった仕事一筋の妻子持ちの男は鏡に写った自分に唾吐きかけてる滑稽さとバカさ加減、そしてそのことに自分では気づいていないというグロテスクさをあぶり出されている愚者ということになる。

そう、つまりそれこそが“解剖学”と銘打った真意だったのだ! そうだ! そうに違いない! よし、勝訴!
…と安直に作品を分析するような自分は弁護士にも映画ライターにも向いていないことがあぶり出されたのでした。ま、でも映画観るのに客観性なんていらんしな!(開き直り)
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