良くも悪くも
“決定打のない”ことが、
観客の想像力を掻き立てている。
法廷映画だから尚更、
明確な答えを求めがちだが、
構成や演出を見ていると、
この映画が投げかけている
コンセプトはそこではないのだろう。
日常の一コマだけを切り取ると、
夫は妻に殺されたようにも見えるし、
自殺したようにも見える。
答えを明確に出さず、
余白を残していることが、
最大の特徴。
裁判の結果論だけ見ると、
ワンちゃんが救世主。
大自然の中で起きた
落下劇という要素も大きい。
第3者が主に
障害を抱えた息子しか
いなかったからこそ、
家族内での関係性の揺らぎという
テーマがブレず、
観客も自分ごととして
捉えられる瞬間は
いくつかあったと思う。
余白が大きいからこそ、
共感できる身近さは大事。
そのバランス感が絶妙だった。
大音量の
音楽の活用方法や、
家族の思い出を
象徴する写真などの演出も
映画的センスの高さが
随所で感じ取れる。
