千年女優

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命の千年女優のレビュー・感想・評価

3.5
19世紀半ば。ローマ教皇の支配下にあるボローニャのユダヤ人一家に六男として生まれた少年で、カトリック教徒の家政婦が家族に知らせずに洗礼を受けさせたために異端審問所警察に連れ去られたエドガルド・モルターラ。物心ついて間もない六歳で大人たちの思惑に振り回される彼を当時の教皇ピウス九世の死と共に描いた史劇ドラマです。

ヴェネツィアの栄誉金獅子賞やカンヌのパルム・ドール・ドヌールを獲得したイタリアのベテラン監督で近年は社会派作品を多く手掛けるマルコ・ベロッキオが、教皇領制度の終焉を迎える時代に実際にあった象徴的な事件を映画化した作品で、カンヌ映画祭では『落下の解剖学』や『怪物』とパルム・ドールを争うなど高評価を獲得しました。

近年のベロッキオ作品と同じく過去にあった事実から現代に通じる主題を探る作品で、キリストの一件から現代に至るまで根強く残る宗教間対立とその歴史的背景に翻弄される少年の姿を描きます。国家と個人の両軸で物語が進むもその接続にはやや弱さを感じるところはありますが、「属性」で人間を判断してしまう人の性を捉える一作です。
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