ノラネコの呑んで観るシネマ

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
この話は知らなかった。
1858年の教皇領ボローニャ。
ユダヤ人家族の6歳の息子が、カソリック教会によって連れ去られる。
一家の使用人が勝手に息子に洗礼を授けたため彼はカソリック教徒であり、ユダヤ人の家庭で育てることは許されないと言う。
84歳になったベロッキオが、パワフルに教会の罪を描く。
現在から見たら完全に誘拐なんだが、当時は教会が絶対的な権力を握っていた時代。
事件が報じられ、世界中から非難されても、教皇は自分が命じた手前動かない。
一方でローマに送られた息子は、”良き信徒”として急速に洗脳されてゆく。
教会の傲慢さも恐ろしいのだが、ユダヤ人が死ぬと天国に行けないからと、勝手に洗礼しちゃう使用人の女とか、のちに自分を攫った教皇に陶酔する息子も含め、盲信する心もヤバい。
風刺漫画がアニメーションになったり、キリスト像が動き出したり、ユーモラスなカリカチュア描写が効いている。
教会がやったことは、ロシアがウクライナの占領地の子供を誘拐してるのとほぼ同じ。
権威主義の組織が力を持ち過ぎると、いつの時代もやることは変わらない。
結局、今世紀明らかになった聖職者による性暴力事件の蔓延も、この傲慢さの延長線上にあるのだろうな。
やはり宗教は、教会で結婚式を挙げて寺で葬式してもらうくらいで丁度いい。