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PERFECT DAYSのMRTのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
@der TU Film

とても好きでした。東京の公共トイレ清掃員として、規則的な日々を送る男を淡々と描くお話。
東京スカイツリーの近くを舞台に、すごく丁寧に作り込まれていて、少し海外向けに作った感が強すぎた気もしたが、まとまっていて鑑賞しやすい作品ではあった。海外の人に日本、東京を知ってもらう映画としても、飾りすぎず良い映画だと感じた(海外に住み始めてからこういう、「日本と海外の中間」の視点を持って批判的に日本映画を観るようになったように思う)。

無口な男なので、基本セリフがないわけだが、やはりさすがの役所広司。妹が姪を引き取りに現れたときのシーンが印象的で、特に父を尋ねてやってほしいという妹のお願いに対する引き攣った表情は、父の描写が皆無だったにも関わらず、簡単ではない人生を送ってきたということ、一見シンプルに見えるトイレ掃除業務にたどり着くまで、この日隣のドラマや紆余曲折があったことを思わされた。

最後のシーンも、眩しいだけだったのかもしれないが、単調な毎日の中で見出す些細な幸せ(木漏れ日の撮影、観葉植物を愛でること、知らない人とトイレにあった紙切れでパズルをすること、運転中に古い洋楽をカセットで聴くこと等)を噛み締めて、今日も生きているという感じがして、個人的には希望に溢れるエンディングだったのかなと思う。

姪役を演じた女優の演技が好きで、今後に期待できる!と書こうと思い年齢を調べたのだが、何と1991年生まれでマジで開いた口が塞がらなかった。

追記:監督ドイツ人だったのか。道理で妙なまでに丁寧に、しかし間接的に日本の文化を紹介するような描写が多々あったわけだ。嫌な意味の違和感ではない、もちろん。
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