蛇らい

PERFECT DAYSの蛇らいのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
1.0
映画としての構造が醜悪すぎる。出資はUNIQLO。プロデューサーは渋谷トイレプロジェクトを発案した柳井康治。脚本に電通。

役所広司演じる平山は、低賃金で働くトイレ清掃員。寡黙で真面目な性格で、あまり人付き合いが得意そうではない。質素ではあるが、丁寧な暮らしぶりが伺え、文学や音楽にも精通している。そんな彼をヴィム・ヴェンダースのノスタルジックでポエティックな映像で描く。そう、この表層だけを汲み取ればの話。

平山は違和感を持つほどに寡黙である。高齢者でありながら低賃金で働かなければならない社会への反発をさせないために、言葉を奪い取るのだ。そして、平山が惨めに見えないように周りのコミュニティからも断絶する。そんな彼の暮らしぶりを、日本人由来の忍耐力と侘び寂びのある生活様式として美化し、ヴェンダースの凄みでもって丸め込まれてしう。

トイレ清掃員のみならず、高齢者になってからも死ぬまで働かなければならない社会が存在することは無惨にも棚に上げられる。あえて低賃金の仕事に就くような選択ができるような人ばかりではない。平山のようにトイレに置いてあった陣取りゲームの紙切れの続きを書き入れ、木漏れ日は素敵だな、なんて言っている呑気な阿呆はいない。そんな余裕すらなく、みんな死に物狂いで働いて懸命に今日を生きている。

過酷な労働環境や低賃金労働で搾取するような立場の人間が、社会的弱者の幸福を上から値踏みし、定義するような映画に賞賛という魂は絶対に売らない。
蛇らい

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