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PERFECT DAYSのmoviediaryのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

波のないストーリー。
言ってしまえば平凡で地味な映画だった。
これは決してネガティヴな表現として用いてるわけではなく、これがベストだと感じさせるような展開の連続だった。
タイトルでもあるPERFECT DAYS。
この意味を改めて考えさせられる上映時間。

役所広司目当てで見に行ったとはいえ、ストーリーにそっと触れるくらいのサイドキャストも粒揃い。極めて自然で映画だということを忘れてしまう。そのくらいの自然な演技である故に、メインの演技が浮きそうで浮かない作品になっていたのだと思う。

さて様々な考察が飛び交う最後の涙の意味だが、私はやはり自分の人生を主観視、客観視した両面があると思う。
作品ではストーリーは主観的目線でほとんどが描かれるため、この人生を羨ましいと感じた人も多いはず。
でも実際この立場になってみれば完全なパーフェクトとは言えない日常なのだろう。
仕事をしている最中も、自分の職業の話題になったときも、感謝の意を込められた視線をおくられることはそうそうないだろう。そればかりか作中でも目立った、トイレ掃除の仕事を本当にしているのか、という質問。あれが全てを語っていると言っても過言ではないあの職業に対しての正直な感想だろう。あの話をしたときの冷ややかな視線こそが客観的にみた主人公の人生なのだ。
自分の職業に誇りを持ち自分の人生を生きる主観、周りからみた自分の職業、及びその人生に対する冷ややかな客観、この二つのギャップに悲観し流した涙が半分。
そしてもう半分は、日常の隙間にある様々な小さな幸福の数々や、その幸福を生み出してくれる温かい周りの人間に対する感謝と喜びの涙。
だから泣きながらに喜怒哀楽の表情が代わる代わる表れていたのだろう。
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