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PERFECT DAYSのsのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
自分の人生はパターソンではなくパーフェクトデイズであることを再確認した。「こんなふうに生きていけたなら」という、映画の本質を全く捉えていない(おそらく電通の)キャッチコピーとは裏腹に、社会や他者との繋がり方、マジョリティとマイノリティなどの問題諸々が浮き彫りになったなかなかにキツい映画だった。
大学三年の頃、ルーリードの訃報を聞いた時のことは未だ鮮明に覚えていて、大学の会室でTame Impalaのバンド練習をしていた時、「さくらちゃん、ルーリードが死んだ」と教えられた時は全身から力が抜けていくようだった。他人からみたら大袈裟なことかもしれないけれど、中学生から大学三年生までの私の人生は確かにそこにあったし、それ以前それ以後でその形は明らかに違うものに変容していったと思う。平島も何らかの大きなきっかけがあって今の暮らし方、生き方になったんだろう。
本当は毎日全然楽しくない。これがファンタジーだったとしても平山が決して幸福だとは思えない。社会への反骨精神や過去への贖罪的なものから来る敢えて選んだこの生活。自分にしか分からない人生。誰にも認められなくても自分がその些細な素晴らしさを感じていられたらもうそれだけ私だけの人生だと思う。渦巻く感情が表情に見え隠れするラストのあの長回しは、どんな感情で何を想えば良いのか分からなかった。


メモ
・フラッシュディスクランチの店員は松居大悟ではなくそのまま店主の椿さんの方が面白かった気もする(でもオファーがあったとしても出たがらなそうなのも分かる)
・金延幸子の「み空」を大学の頃よく聴いていたのを思い出した、神保町ジャニスのことも
・平山が自分と同じOlympus μのカメラを使っていて嬉しくなった


2024.03.30 2回目
お父さんの映画みたいだと思った。仙台に帰った時、一緒に観ればよかった。お父さんと一緒にリビングで「パリ、テキサス」を観た日のことを思い出した。お父さんが元気になって、また一緒に映画を観れる日がくることを祈っている。改めてこの先この国で生きていくのは苦しい。
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