王冠と霜月いつか

首の王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『俺は、百姓だよっ!』

抜群に面白かったです。
コメディ映画じゃないのに、
羽柴“ビートたけし”秀吉、羽柴“大森南朋”秀長、黒田“浅野忠信”官兵衛のトリオ芸で、複数回、声を出して笑ってしまいました。
どうせ、しょーもない自称映画評論家レビュアー(自分を含めて)等が、しょーもない重箱の角をつつくような批判的レビューを沢山出すんでしょうけど(自分は含まれません)、この作品のテンポの良さとか、キャスティングの妙、メリハリの効いたシークエンスがわからんのなら今すぐ、腹を切れ!!と言いたい(笑)

清水“荒川良々”宗治の切腹シーンで茶々を入れる羽柴秀吉、『武士の最期なんですから~』と諫める黒田官兵衛に、
「俺は、百姓だよ!」と返すのは、世界の巨匠北野武になっても原点は
「俺は、芸人だよ!」と言ってる様に聞こえて、めちゃくちゃ格好良いわ~と思いました。面白いってこうやるんだよっ!わかんねーかなー?って。

ゴジラ-1.0も面白かったんですが、感情を揺さぶられるのは、圧倒的にゴジラですけれども、キャスティングの部分、役者の演技力だと、此方の方が一枚も二枚も上かなと思います。ずっと強い尾張弁でほとんど何を言ってるかわからないけれど傍若無人さが観客に伝われば良いことに振り切った織田“加瀬亮”信長、ストーリーの進行だったりコメディパートも担当するために、標準語を使う羽柴秀吉&徳川“小林薫”家康。信長以外が尾張弁と三河弁で台詞廻してしまうと、映画としてはわかりにくくなってしまいますからね。
他にも主要な武将を演じた方々から創作キャラまで北野組の面々が雁「首」揃えている辺りが安定感半端なかったです。

脚本も、ある程度は史実に基づいている所為もありますが、一般的な、主人公が葛藤を乗り越えて云々という型から外れているのに、しっかり話がまとまるのも素晴らしいです。ラストの明智“西島秀俊”光秀の「首」を蹴っ飛ばすというシーンはお見事!と言うしかありません。

最後に…戦国時代は、まあなんとヒトの命が簡単に奪われてしまうものなのかと改めて思いましたが、現代になって人権、法律と掟が整備されて、ただ命を落とすことは少なくなったけれども、極々一部の成功者以外は社会的な奴隷として魂が死んだまま(気付く気付かないは別として)生き続けているのは不変のまま。パワハラ防止法があろうがなかろうが、組織の中で上位の者と如何にして上手くやっていく為に生じるストレスやヒトの卑しさなどは、変わることはないのだろうなあとちょっとヘンな介錯…じゃなくて解釈までしてしまいました。

…古田織部は出て来ないんだな。曽呂利“キム兄”新左衛門がその代わりか。それと、千利休と岸部“サリー官房長”一徳さんの身長が同じというのもさりげなく凄い。もっと活躍させても良かったかもしれないが。大竹まことよりね。