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ネクスト・ゴール・ウィンズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.5
 あれだけ病んだマイケル・ファスベンダーなのにディズニーかよと思いながら、その捻じれたマッチングにサムシング的な何かを感じた私は全力で映画館に飛び込むのだが、毒にもクスリにもなり得ない劇映画を104分見せられたという印象しかない。70年代であれば『がんばれベアーズ』であり、90年代なら南国ジャマイカのボブスレー選手団を扱ったジョン・タートルトーブの『クール・ランニング』そのものであり、それ以上でも以下でもないという凡庸な感想しか出て来ない。タイカ・ワイティティはディスニーとマーヴェルの信託を得て、すっかり上昇気流に乗った実業家としての素顔ではなく、私は俳優出身としての監督の世界観に期待するのだが、いつも映画は見事なまでに空っぽで、中身がない。今作も良かった部分としては米領サモアの風土やお国柄や文化が知れたことくらいで、群像劇の主に登場人物たちの描き方にはほとんど関心が持てなかった。

 FIFAランキング最下位の国の立て直しを任されながら、自身の欠損を埋めて行くマイケル・ファスベンダーの病理は良かったのだが、タイカ・ワイティティは流石にフットボールというスポーツの身体的アクションにもっと気を配るべきではないかと思う程、肝心要の映像がダイジェスト的なのは残念でならない。どこまでが実話でどこからが脚色なのかは知る由もないが、あらかじめディズニーのメソッドとしては全ての多様性を受け入れる空気で、単なる負け犬よりもLGBTQIA+の規範を重んじるディズニー帝国の態度がむしろ白々しい。ありふれた美談の中に物語が宿るのは映画の特性としても、並外れた美談を描こうとする場合、すっかり去勢された監督を起用すれば、このような毒にもクスリにもならないフィルムになり下がるという事実が公に明るみに出る。せめてクスリと笑えるところがあれば最高なのだが、それもない。コンプライアンスとポリコレに支配されたディズニー帝国の迷走は続く。
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