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ネクスト・ゴール・ウィンズのmiumiuのレビュー・感想・評価

4.3
タイカ・ワイティティ監督作品。
日本で観られる長編監督作品はだいぶ観たし、そろそろ自分の中で飽きがくるのでは… と思いつつ公開初日に鑑賞。
問題なしの面白さで爆笑&爆泣きした。
そして今作はまさかの実話ベースなのが新鮮だった。

ワールドカップ代表決定戦で過去にトラウマ級の大敗を喫し、得点経験すらないアメリカ領サモアのサッカーチームが、新しいコーチを迎えてチーム立て直しをはかるサクセス(?)ストーリー。
人種も文化も違うアメリカ領サモアにやってきたヨーロッパ出身の白人コーチ… という、いかにも対立を招きそうな状況を描きつつ、きちんとチームとして纏まっていく展開が楽しい。
ギャグもある意味ギリギリだと思うんだけどw チームや町の人たちの陽気な雰囲気と物語としてのテンポの良さに乗せられて涙が出るほど爆笑しちゃった🤣😂

チームの中にいわゆるトランス女性がいる今作。
物語の舞台が約10年前なのもあって、地元のみんなは受け入れてくれるのに試合に出かけると分かりやすく差別を受けてしまうのは、あまりにもしんどくて泣いちゃった…
そして彼女が、誰よりもチームのために一生懸命なのが、これまた泣ける。
他にも過去の代表決定戦のトラウマを乗り越えようとするキーパー、何とか1点獲得しようとあの手この手で監督をやる気にさせようと奮闘するチームのオーナーなど、濃くて愛おしいキャラクター揃い。
そして何より、チーム立て直しにやって来た白人監督自身が、コーチとしての姿勢や私生活に問題を抱えている有り様。
演じているマイケル・ファスベンダー、ご本人に似せるためかいつもより痩せてシュッとした雰囲気に仕上げていて、やさぐれポジションのキャラなのに格好良かったな…!

サッカーチーム立て直しだけでなく、登場人物それぞれが自身のあり方を見つめ直して一歩前に進もうとする話でもあり。
社会からはみ出したり除け者・負け犬扱いされたりしそうな人たちを優しくユーモア溢れる視点で見つめ、受け入れてくれる描き方はまさにワイティティ節。
最後までずっと笑いを入れてふざけ倒した印象で(実際ふざけてはいるんだけど笑)単なる感動のサクセスストーリーに仕上げていないところが私は好き!
映像も音楽も楽しく美しく、元気を出したいときに何度でも観たくなる作品だった。
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