ドント

ほんとにあった!呪いのビデオ101のドントのレビュー・感想・評価

3.5
 2023年。夏に劇場公開予定の「100」をスッ飛ばして、掟破りに101巻が先行リリース。とてもよかった。低めのこわさがスーッ……と流れゆく今までの感触ではなく、不気味で、雰囲気があり、イヤな感じの巻。心霊ドキュメンタリーをはじめて観る人にも優しい巻なのではないか。
 怖いというよりは気味の悪い、いや不思議な感じの「謎の光」、怖くはないけど現地取材も挟んでの編集がうまいこといっていて、不思議体験として面白く仕上がっている。川辺をデート中、対岸にいる人が……という「水没」は当該の怪人物が遠すぎてちっこく、「ちっちぇーな!」と近づいたり凝視せざるを得なくなる。そうなると必然しっかり見ることとなり、「アッ本当だ……」と思わされてしまう(なおReplayで寄ってくれるので凝視したくない方にも安心)。直後の水没動画もノイズ、声、煙か汚水のように見えたモノが……と全体に絶妙にイヤな感じでよい。対岸に誰か、というのはちと頻出しているけど怖いのでヨシ。
「疫病神」、古びた日本家屋でのかくれんぼモノ。怖い。超いい。ある部屋の電気をつけるとグチャグチャに物品が押し込められておりその異様さに「廃墟か?」と思いきや、次の流れで玄関にとりつけた手すりが白々と見える。住んでいるのがかなりの老人で、使わない物品をひと部屋に押し込めてあることが伝わる。その後に映る古びた和室、低い木のテーブル、上にヤカンが置いてある反射式のストーブなどにも、ノスタルジアに収まらない「終わりの近い家」の雰囲気が宿っている。そんな場所でかくれんぼなんかした日にゃ、そりゃ出ますよ。オバケの出方も抜群に見事で、一つ目設定は要るか?と思うけど、大変印象的な作であった。
「薄闇」はオバケの出方が奥ゆかしいと同時に大胆、電気のつかないトイレという場所に明るい女子高生、って対比が効いている。「従姉妹」は昔のほん呪を思い出すようなつつましい怪異ながら、ありそうだな、と思わせる。箱にぶつかる、というアクションがものすごくいい。
 長編にしてこの巻でちゃんと完結する「ジェノサイド」、青年の失踪、直前にビデオに収められた怪異、怪しい霊能者力、呪物らしきもの、養豚場の廃墟、などが並べられ、これらが微妙に予想を裏切るように形になっていく。唯一「ビデオを握っていた」というのは、ちょっとどうか思った。一から9.8くらいまでは説明してしまう総合演出・藤本スタイルがここでは「説明はつくが髄の部分は見せない」「理屈はついても、もはやどうにもならない」に着地して上手いこといっている。
 明るく乾いたコンビニの場面からはじまり、養豚場とお堂という真っ暗で湿った場所へと辿り着く構成の妙。ものすごくヤバそうな場所の探索に「男鹿、物理的に入れない」「どんどん行きすぎる斎藤」「若干のパワハラ」「オワーッ!?」などの笑いのスパイスが効いていて、より一層恐怖が引き立つ。本編中で指摘されないおまけオバケ(?)もいるので、お堂のシーンはよく観てください。
 強烈なインパクトこそないがまとわりつくようなモノがある巻だった。101巻にして心霊ドキュメンタリーの総本山の貫禄が戻って……なんて書くと褒めすぎだけど、この感じで102以降もやってってほしいし、っていうか劇場公開の100巻はどうなるんでしょう。こうなったら全国津々浦々、シネコンから公民館までいろんな場所で上映してください。
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