仮面の大使

ミッシングの仮面の大使のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.1
 ほのかな光に救われる映画。

 静岡県で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くしても見つからないまま、3ヶ月が過ぎる。母・沙織里(石原さとみ)は娘の帰りを待ち続けていたが、少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦り、夫・豊(青木崇高)との温度差から夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けるローカル局の記者・砂田(中村倫也)だけが頼りだった。娘に会いたい一心で僅かな希望にすがる沙織里だったが…。

 『空白』の吉田恵輔監督最新作。『空白』は重たい映画だったけど、今作もそれ同等、いやそれ以上にヘビーで心にのしかかる映画でした。

 劇中無駄な音楽は流さないことで醸し出されるリアリティ感。役者陣の演技もあって、これは映画ではなくリアルな映像なのではないか…と思うことも多々あり。

 魂を削りながら演技してるんじゃないというほど圧巻の演技を見せた石原さとみはすごかった。石原さとみ感は完全に消え、娘を失った母親そのもの。

 本作で描かれる思いやりを失った社会。夫婦に対する謂れのない誹謗中傷など腐った奴らがたくさん登場する。自分はそこまでひどい人間ではないと信じたいけど、行方不明のニュースとかを見てもどこか他人事でしか捉えていなかった事実を思い出し、とても恥ずかしくなった。普段この世界には思いやりが足りてないとか感じてたけど、誰より自分に思いやりが足りてなかった。

 『空白』でも描かれたマスコミの報道姿勢がより繊細に描かれてる気がして興味深い。こういうのを見ると報道を鵜呑みにするのは本当に危険だと思う。

 ラストに少し光が見えるのが救い。

 かなり精神的にくる映画なので、体調が万全な時にご覧下さい。

 
仮面の大使

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