小児がんで12歳という若さでこの世を去った、森上翔華さんという女の子を主人公にした、実話をもとにした物語。
彼女は幼いころからがん治療のため入退院を繰り返しており、体や心への負担は当然大きかったはずだけど、それを思わせないほどの明るい笑顔で人生を謳歌しようとする。
がんが寛解する見込みが限りなく薄く、余命いくばくもないことは本人も理解していたのだろう。それでもふさぎ込むのではなく、残された時間をもっと楽しくもっと明るく生きようとするパワーは、彼女の周りにいる人々の運命まで大きく変えていく。
この映画では「奇跡」という言葉が繰り返し語られるが、彼女が周囲の人々へ与えた前向きな気持ちは、まさにかけがえのない奇跡のようなものだろう。
舞台は広島県福山市で、福山にゆかりのある役者が複数出演していて、素朴な広島弁がどことなく懐かしい。
森上翔華さんの実際の親友であった夢空さんが本人役として出演していて、この点も「きっと実際にこんな子だったんだろう」というリアリティを生んでいる。
あらすじを見て重いテーマの作品と思われるかもしれないけれど、コメディタッチで楽しく元気がもらえるような、じんわりと心が温まる作品となっている。