みーちゃん

さらば、わが愛/覇王別姫 4Kのみーちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
劇場で観たおかげで映画への没入感が凄かった。冒頭から引き込まれ、約3時間という長尺もあっという間。これ普通は収拾がつかないと思う。

登場人物の彼らは、実際にこの映画の中に生き、何十時間、何百時間、何千時間もある記憶の中から紡いだように感じる。これだけの情報量がありながら詰め込み感も中弛みもなく、厚くて、熱くて、複雑でありながらシンプルでさえある。監督が伝えたいことが明確にあるのは当然として、その伝え方にブレがないというのは容易なことじゃない。

子ども時代のシークエンスが結構長く、今は描写できない酷さだから辛いが、これは事実だし、目を逸らしてはいけない。彼らにとって背景が全て(運命)だなんて思いたくはないが、この比重でしっかり描いた勇気とバランスに拍手。過酷な現実、揺れ動く思春期、芸事への開眼と涙、搾取する大人達、一つひとつのセリフが恐ろしいほどセンスがいい。カメラワークもどうやって撮ったんだろうと思うシーンの連続だった。だから少年がレスリー・チャンに成長した場面だけでも静かな感動を覚える。心の中でおぉーってなる。

これ以上長く書くのはやめるが、アートではなくエンタメとして、京劇のメイク、装飾、衣装などの文化的な価値を繰り返し映像で示したのも素晴らしかった。