かえるのエリー

窓ぎわのトットちゃんのかえるのエリーのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.3
映画化を聞いた時は懐かしい〜と思った。小学校の時に初版が出て凄く話題になったので。でも読まなかった。黒柳徹子の実話で、変わり者故に浮いていて苦労したというエピソードを聞いており、それが当時の自分には、2つ上の知的障害(無論当時はそんな呼び名はない)の女の子を彷彿させ、現代のように特別級もなく子供だらけの昭和で、彼女が結構虐められていたこともあり、怖くて読めなかったというのが正直なところ。

今日は仕事納めだけど嫌なことが多かった。でも本作の評判の良さできっと心が洗われるのでは、とほのかな期待で映画館へ。




以下ネタバレ感想




本ばかり読んでいた息子が初めて服を泥で汚して帰ってきた日の、母の後ろ姿・・・もうここからずっと泣きっぱなし。とにかくセリフではなく作画で心情を表すシーンが多いのが効果的で、目から心へストレートに入ってくる。

ヒヨコを飼うのを反対した両親、でも泰明ちゃんは「ヒヨコは幸せだった」と言う。それが伏線では、の予感は的中し、彼は短い人生を終えた。その事をトットちゃんが受け入れるまでの時間に当時の世を映し出した演出も見事。

トモエ学園、昭和初期にこんな素晴らしい学校があった奇跡。小林校長の目の炎は、その後幼稚園を再建したそうだが、小林の死去と共に閉園したそう。

作画が可愛らしく素晴らしい。特に3つの幻想シーンは目を見張るものがあり、1つ目の色鉛筆風のなんて鮮やかなこと!

そして、まさかトットちゃんで「雨に唄えば」を観られるとは! お腹を空かせた上、歌うことも奪われたトットちゃんと泰明くんがリトミックの精神(トモエ学園が日本初の導入だそう)で雨の街を踊りまくる、切ないけど色鮮やかな楽しいシーンだった。

星を少し減らしてしまう理由は、たまに顔面のパーツ位置がおかしかったこと。中盤のお父さんの横顔、あの首の角度では表情まで見えないよ。

トットちゃん役の大野りりあなと、泰明ちゃん役の松野晃士がありえないくらい素晴らしい!!!(filmarksは今すぐに彼をキャスト欄に記載せよ!) 2人のシーンがかなり多いが、大人顔負けの存在感。黒柳もりりあなちゃんを絶賛していたが、将来が楽しみでしかない。

正直、今トットちゃんやるの?ってどこかで思っていた自分がいたけど、多様性や戦争など、今だからこそやるべき作品であった。仕事で嫌なことがあったなんて、どんだけちっぽけな悩みだよ。