ドント

ドミノのドントのレビュー・感想・評価

ドミノ(2023年製作の映画)
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 2007年……じゃなかった2023年。娘を誘拐され傷心を抱えたまま復職した刑事が、銀行強盗計画の通報を受けて現場へ。犯人が狙っているという貸金庫の中には娘の写真が……さらに一言呟くだけで人間を操れる男が銀行へと侵入してきて……どうなっている? 娘に、自分に、何が起きている?
 2000年代とかDVDスルーの映画で5回くらい観たことがあるような感触であるし映像は『インセプション』じみているて大爆発とか銃撃戦とかはないのだけれど、毎度おなじみ不景気顔のベンアフと、謎めいた黒幕を演らせたら絶品のウィリアム・フィクナーが出て不景気に謎めいてやっていくのでなんやかやでツルーッといけてしまう一作。あとこれ90分なんですよね。そこはとてもいいですね。
 ただこれちょっと、もうちょっとね、何か物足りない気がしますね。たとえばこう、超催眠術を使うってんならきっかけとして「髪をかき上げる」とか「指を鳴らす」みたいなのが意味ありげにパチパチ挟まるとそれっぽく見えるわけで、そうなると映像にもメリハリが出てイイ具合だったと思うの。「遊び」が出る。序盤はちゃんとライターで「遊ん」だりするわけで、ロバート・ロドリゲスくらいになりゃあそんくらいの工夫はするはずなんですが、特にない。ゆえに平坦な印象になる。
 中盤からの「ほれやったらなんでもアリやないか」展開もまぁ、ちゃんと皆さん頑張って作り込んでらしたので悪い印象はない。ただあの悪の組織みてぇな雰囲気はどうかな? いいのかな? とは思う。あと「むっ!」「むーっ!」っていうバトルとか、最後は台詞で説明するあたりも難しい顔になりました。どうにもフックが少ないのである。なんとかならんかったのかな。
 しかしまずまず、このくらいのね、「まぁこんなもんッスよ」な湯加減の映画というのはなかなかないので、ありがたさを感じる。あったかい素うどんみたいな優しさがありました。ベンアフとフィクナーの存在感バトルはもちろん、個人的には娘さん役の女の子の「あっ、強い」と思わせる雰囲気がよかったので、この人にはホラーとかサスペンスにバリバリ出てほしいと思う。
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