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SISU/シス 不死身の男のしののレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
3.3
ナチスに追われて、追って、ぶち殺す。これで91分。憎らしい敵と理不尽な屈辱展開……からの大反撃! という王道をおさえつつ、戦争モノの緊迫感、西部劇の孤高さ、ジャンル映画の無茶さが融合しており、総じてサクッと楽しめた(試写会にご招待いただき鑑賞)。

ランボー的「痛そうなセルフ治療」シーンがあったりと生々しい実感と緊張感がある一方、殺しのシーンは痛快で景気良いというバランスになっている。個人的にはもっと無茶苦茶やってくれても良かったけど、シリアスさと痛快さのコントラストを意識したようだ。

このテイストは、冒頭で語られる「戦争から自由になろうとした男」と符合すると思う。ロケーションは広大な極北の地で、そこには縛り首の死体や地雷原など惨禍の跡があり、主人公が受ける傷はとても痛々しい。しかし、そんな酷い世界の鼻を明かす瞬間がある。これこそが、争いの絶えない世界に対する本作なりの反骨精神だろう。

正直、「死のうとしない」ことが主人公を不死身たらしめるとするなら、ご都合的な無茶展開よりは“諦めの悪さ”が生き残りに繋がるというロジックを守ったほうが良かった気がするし、ベースをリアルな戦争地帯でのサバイバルに置いたが故の若干の間延び感もあるが、クライマックスのフィンランドらしいサプライズ展開も含めアガるところはアガった。
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