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Smoke Sauna Sisterhood(原題)のmarikabraunのレビュー・感想・評価

Smoke Sauna Sisterhood(原題)(2023年製作の映画)
4.5
すばらしかった。客体としてではなく主体としてのありのままの身体があるように感じられて、その美しさと奇跡のような親密さに序盤から何だか泣けてしまった。ルッキズム、出産、中絶、乳がん、初経、性被害、カムアウト、それぞれの家庭内の事情、死を意識したこと。なぜ男性はアプリで性器の写真を送るのか、というジョークをのぞいて、裸の女性たちの口からこぼれる体験はどれも苦痛を伴い、時おり胸をえぐられるような悲しみがひろがる。それらが完全に消え去ることはなくとも、不思議と重さを残さないのは、個人を超えた対話に癒され、痛みも汚れも流れ落ちてゆけ、と力強いフォークソングがひびく儀式を通過して、浄化されたような感覚になるからだろうか。個人的にも先月フィンランドの田舎で初めて体験した、とにかく暗くて真っ黒で、ぽつんと小さい窓からわずかに光が差すスモークサウナ。人が使わない時期は燻製室として使われるとは聞いていたけど、実際に肉が吊るされているシーンを初めて見た。一度シャワーを浴びたくらいでは消えないスモーキーな香りをまとうので、燻製された肉の気分を味わえるし、すべてが繋がっていて、自分もその一部分なのだと感じられてほんとうにいい体験だった。もう恋しい。
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