おさななじみの想い出は
青いレモンの味がする

アフリカから久しぶりにドイツに帰ってきたら、かつての恋人ヘラが親友の奥さんになっていた…。

ただこの映画の主題はそこじゃない笑
動物園が舞台で、空襲により動物たちが大パニックを起こす…というものだ。
この映画は、1940年9月から撮影が始まり1943年2月に完成した。

しかし、1940年に発案された主人公兼監督ハリー・ピールによる「パニックを起こす動物たち」というテーマは、映画が完成した1943年にもなると現実化しており、ベルリンの空襲では、動物園の多くの動物が死んだり、パニックに陥って通りを走り回るなどの悲劇を生んでいた。
その為、 国民啓蒙・宣伝大臣ゲッベルス指導下の検閲により、 "観客に毎日鳴り響く空襲警報の日常を思い出させてはならない”という理由で、公開禁止となった。
戦後、フィルムは紛失していたが、東ドイツで発見され、撮影終了から10年後の1953年に一般公開された。

私は動物にも動物園にも全く興味がない為、動物好きにはたまらないであろう動物たちの躍動するシーンや可愛らしいシーンはどうでもよく、ピール監督演じる主人公ペーターとドロテア演じるかつての恋人ヘラの関係に関心を持って観ていた笑
再会シーンのドロテア・ヴィークの目を瞑る表情なんて、もうたまらないね！
でも彼女にはリル・ダゴファーやアルレッティのような匂い立つかのごとき妖艶さは皆無 笑
どこまでも気高い人です。


主人公ペーターは、ドイツの動物園の為にアフリカで動物捕獲者として働いていた。
第二次世界大戦勃発後、イギリス植民地の兵士から追われて逃げる途中、ペーターと同僚は銃撃を受ける。同僚は死んだが、ペーターが受けた銃弾はシガレットケースに喰い込んでいた。
彼の命を救ったのは、昔、恋人ヘラがプレゼントしてくれたシガレットケースだったのだ。
シガレットケースの中には「あなたについて行くわ！愛と忠誠を込めて ヘラ」と書かれていた。

主題が動物園のパニック故に、ペーターがドイツに帰って来てからの三角関係、四角関係は、一時の緊張感のみでエスカレートするわけでもなく、とーっても安心・安全にモラルを保ち流れて行く笑

この映画でペーターと結ばれる若い女性クリスタを演じているルート・エヴェラーは、1937年の日独合作映画『新しき土』で原節子と共にヒロインを演じていたいかにもドイツ女性らしい金髪碧眼の美女だ。
しかし、彼女はこの映画が公開される6年前の1947年に既にこの世を去っていた。自殺か否か、未だに不明のようだ。