みや

ミツバチと私のみやのレビュー・感想・評価

ミツバチと私(2023年製作の映画)
4.0
映画の途中で、「クラスに女性器のある男子がいるよ」というセリフがサラッと出てくる。こういう言葉が、何の気負いもなく出てくるというのは、彼女をはじめとして、そのクラスやその学校では、そのクラスメイトの男子を当たり前のこととして認知しているということだ。
どの学校もそうであるべきなのは間違いないし、日本でも、きっとこうした対応が当たり前になっている学校もいくつもあることだろう。
ただし、もしそういう方向になっていないとしたら、どこに理由があって、何を変えていけばよいのか。そんなことを考えさせられた映画だった。

私自身も、4才の孫(男)がピンクの靴を好んで履いていたことがあって、「この子の性自認はどうなんだろう?」と、正直ドギマギした経験がある。
ドギマギする時点で、私自身の中に無自覚だった偏見が潜んでいた訳で、それに気づいたときは結構ショックを受けた。

映画に出てくる父や祖母が語る「甘やかし」という捉え方は論外だよなと断じている私自身だって、生身は偏見だらけなのだ。

偏見は、生活していると自然と形作られてしまう部分があるが、逆に人権感覚は、何もせずには絶対身にはつかない。大切な人を傷つけないために、知ること、気づくこと、考えることを通してずっと学び続けたいと思っている。

ところで話は全く変わるが、大学時代、私も、主人公の母親のように、蜜蝋を使った蝋型鋳造に取り組んでいたので、強烈に懐かしかった。
画面の向こうから、蜜蝋の溶ける匂いが漂ってくるような思いがして、きょうだいみんなで作品を作るあの工房のシーンは、自分にとってはめっちゃリアルで、いいシーンだった。
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