"芸術作品がもたらすのは答えではなく問い"
"その本質的な意義は---矛盾する答えがはらむ緊張の中にある"
by レナード・バーンスタイン
冒頭のこの言葉こそ、彼の音楽であり、フェリシアとの関係ではなかったのか。
音楽は芸術。
そして、愛もまた芸術作品のようではないか。
突き詰めれば突き詰めるほど、その素晴らしさを感じる。
一方で"愛とは何ぞや"という難題にぶち当たる。
その"矛盾する答えがはらむ緊張"は、よりフェリシアが強かった。
バーンスタインという希代の音楽家にしてバイセクシャル。
自分を愛してくれる、しかし、他の男も愛している。
偉大な夫であることの誇りと憎しみが"矛盾する答えがはらむ緊張"を限りなく生み出してしまった。
この映画は、バーンスタインの人と音楽を讃えるだけの伝記映画ではない。
バーンスタインとフェリシアの愛憎の物語である。
もっと言うなら、バーンスタインという破天荒な男を愛し、翻弄されたフェリシアの物語である。
エンドロールの最初に出てくる名前が、フェリシア役のキャリー・マリガンであることからもそれが伺える。
さらに、アカデミー賞では助演ではなく主演女優賞にノミネートされたではないか。
彼女の名演なくして、この映画の成功はなかったのではないか。
もちろんブラッドリー・クーパーも素晴らしい演技であることは間違いない。
彼もまたアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。
しかも今回は監督と共同脚本も務める活躍ぶり。
構想15年をかけてこの映画を創り上げた。
さらにプロデューサーにはマーチン・スコセッシとスピルバーグが名を連ねる豪華な布陣。
アカデミー賞作品賞ノミネートも納得の映画です。
やっとNetflixで観ることができた。
この名画の香り漂う映画らしい映画を、映画館で観ることができなかったことが唯一悔やまれる。
大音響で彼の音楽を聴きたかったなあ。
iPadで観ちゃった。
余談
主演二人の若かりし頃からシニアまで作り込んだ特殊メイクが素晴らしかったですね
ブラッドリー・クーパーが、かなりバーンスタインに寄せてましたよね