回想シーンでご飯3杯いける

マエストロ:その音楽と愛との回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.5
Netflixが年末向けに送り出す作品の中でも、予てから注目度が高かった作品。ミュージカル「ウエスト・サイド物語」の音楽を手掛けた事でも知られるレナード・バーンスタインと、その妻フェリシアの半生を描いている。

注目すべきは、まるで彼の音楽をそのまま映像化したような構成だ。レナードとフェリシアの会話から、背景が突然ステージに切り替わりダンスシーンに切り替わる等、彼のクロスオーバーな作風を目で楽しめる作りになっている。気分屋の側面もあった彼の人柄を反映するかのように、その映像表現はかなり豪快。「人生の記憶が走馬灯のように〜」という表現があるが、正にそんな感じである(エディット・ピアフ愛の讃歌を思い出した)。

しかし、どうして音楽家の人生を描く実話映画は、いつも「苦労ありき」で描かれるのか? 本作でも、同性愛、難病、夫婦の不和と、後半は不幸と波乱のオンパレード。「ボヘミアン・ラプソディ」が典型例であるが、まるで波乱の人生を送らないと良い音楽を作れないみたいではないか。

映像表現的にはかなり良く出来た作品だけに、ありがちなストーリーはとても残念(登場人物の人生に文句を言いたいのではなく、映画としてまとめる際の切り取り方が不満)。音楽好きとしては、そろそろ新しい切り口の映画が登場して欲しい。