砂場

アンダーカレントの砂場のレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.5
ネタバレなしでレビューします

ジャズのジャケットには美しい傑作が多いけども、ビル・エヴァンス&ジム・ホールの有名なジャズアルバム『アンダーカレント』もそうした一枚だ。暗い水中に浮かぶ水死体を思わせる女性、水面の波紋と光、まさにこの静謐なアルバムにぴったりだ。

ただ、あの写真のオリジナルは1947年の『Weeki Wachee Springs, Florida』という作品で、水中ダンスのワン・シーンらしい。楽しいダンスの写真がなぜか死を想起させる。
シェイクスピア『ハムレット』のオフィーリアを想像させるところもあり、自分は水死体をイメージしたものと思っていた

『アンダーカレント』の漫画原作もあのジャケットのイメージを”水死体”としてオマージュしているのでしょう、冒頭数ページから常に死のイメージが漂っていた

原作はかなり優れているし圧倒されましたが今回は原作の漫画よりも映画の方が良かった。

原作は映画的描写に優れた作品だ、それはもちろん作者豊田徹也の才能なのだがそれだけに水面の波紋や、水中をスローモーションで沈む真木よう子、カラオケのワイルドな音楽など映像と音のインパクトが映画の方が強く感じたのも事実、時間の持続や瞬間移動、切り替えなども漫画よりも映画むきの題材かもしれない。ラストの出会いの仕方も映画の方が静かなる激情を感じさせた。
ただ原作の価値は減るわけでもなく、原作が触媒となってこの映画ができた感じだ

リリーフランキーが真木ようこにいうセリフ「人のことがわかるってどんなことですか」、長く一緒にいてもわからないこともあるし、1時間くらい話しただけでわかることもある、会ってない人のこともわかることもある。
家族だから互いを理解してる??そんなこともない、案外家族間って話せないもんだよな、なぜだか知らないけど

この映画は「真実と嘘」についての映画だ、真実と向き合うのは怖い、なので人は嘘をつくことがある。
真実から逃げ回るのか、向き合うのか、、向き合ったら次に何か開けるのかあるいはさらなる地獄に落ちるのか

真木よう子も井浦新もいいリリーフランキーもいい

ドジョウか、、柳川鍋なら食べたことがあるが、あんなに生々しいのはちょっとな

風呂の水面、死のイメージの川、近所の運河

男湯と女湯で別れての会話はほのかにエロティックで、漱石の『道草』を思い出した
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