茶碗むしと世界地図

インサイドの茶碗むしと世界地図のレビュー・感想・評価

インサイド(2023年製作の映画)
-
 ウィレム・デフォー主演のスリラーである。

 全体的にはウィレム・デフォーの演技を見る感じの映画なのだが、脱出ものの軌道を使いながら芸術の普遍的で、かつ崇高な精神性が強調されている。内省的なよくあるアート映画でけったいではあるが、ニモ(ウィレム・デフォー)の芸術家としての生き方を取り戻すおとぎ話(ペントハウスがあまりにも奇妙だし、非現実的な夢っぽい雰囲気である)として見ればいいのだろうと思うし、まあまあまとまってはいる。

 個人的には、人類の文化的躍進をニモの行動を通して描いているみたいな感じに見えるところがある。極限の状況に追い込まれて原始的にサバイバルしていくニモが破壊と創造を繰り返して壁画や歌、口承(あと宗教)といったものを繰り出し続ける姿はなかなか面白いのではないかと思った。それと人は孤独かというような問いかけがあるが、外界とのコミュニケーションが一切絶たれるとそれはそれで難儀なもので、社会とのつながりはちゃんと保ちましょう……みたいなことをわかりやすく示唆しているようにも思えた。