みーやん

ザ・キラーのみーやんのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.9
別のレビューに書きましたがここのところ殺し屋もの映画を立て続けに観すぎている感があってちょっと胃もたれをおこしているとも言えるのですが、でもデビッドフィンチャーはもともとすごく好きな監督だし本作のニュースを最初にきいたときはマジか!フィンチャーが!しかもマイケルファスベンダー主演で!と椅子から腰を浮かせてしまったものでした。なので胃もたれがどうとか言ってる場合ではなくウキウキと鑑賞。蓋をあけてみると他の殺し屋ものと比べるとかなり個性的で、俺は面白かったけどよくここまで思い切って舵きったなーという印象でした。

フィンチャーがかなり長い間映画化の案をあたためていたグラフィックノベルが原作ということで、そこは手抜きなし真剣勝負でフィンチャーらしさがびっしり詰め込まれてます。が、全体的に主人公の心の声や聞こえている音が一人称的にずーっと続くいっぽうその外で起こっていることはかなり淡々と描かれるので、いわゆるサスペンスもの・アクションものというジャンル映画の流儀からするとだいぶ退屈に見えるっちゃ見えます。
でもその淡々としたリズムのなかにも細かい起伏の忍ばせ方だったりとか、ゆうてもいろいろ主人公が思ってるほどうまくいかないっていうチグハグなコミカルさだとか、そういう部分はきっちりあるのでちゃんと楽しめるようにはなってるように感じました。あとやっぱりキャストの力ですよねー。主演のファスベンダーもそうだし、もちろんティルダスウィントンもそうだし。主人公が寡黙なだけに対峙する相手がわりとペラペラ一方的に喋る展開が何度も出てくるのですが、そこがちゃんと見られるようになってるのは脚本や編集だけでなくやっぱり演技もあってこそなんでしょうね。

ただ全体的に感じたのはネトフリオリジナルといっても劇場で鑑賞するのに準ずる集中力が必要なトーンの作品なのかなってことでした。自分は最初に書いたように満を持しての鑑賞ということでなるべく劇場鑑賞に近い状態にしようと画面に目いっぱい近づいて(あんたちょっとなんぼなんでも画面に近すぎへんか、と家族に注意されましたが)ヘッドフォン装着で臨んだのですが、それも功を奏して楽しめたんだと思います。とくに音響については不穏な低音をバンバン効かせてくる劇伴なので、しっかりしたスピーカー環境、でなければヘッドフォンが推奨ではないでしょうか!
みーやん

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