真田ピロシキ

岸辺露伴 ルーヴルへ行くの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.3
えっとね。まず全然関係ないこと言います。先週ストリートファイターⅥ買ったんです。12000円もするデラックス版をずーっと前からDL予約して。格ゲー部分は前より面白く、トレモしてるだけで楽しいんです。でも本作の目玉としてた1人用がしょっぱい似非オープンワールドに贈り物をするだけの古臭いギャルゲー乙女ゲー要素をつけて、何よりムカつくのは一般人に喧嘩を売り、段ボール被った奴らが襲い掛かり、ルンバと戦う世界観。舐めてんだろ。こんなものをドヤ顔で差し出されてストリートファイターの話に何の興味も抱けなくなってしまった。私はキャラが好きでこのシリーズやってたのに、ルンバと戦う世界のキャラにどうやって真剣味を持てようか。もう脳内で超激推しの魂キャラであるジュリと春麗のラブラブ百合ストーリーを妄想してこのシリーズへのネガティブ感情を何とか抑えている有様。露伴先生お願いだ。ヘブンズドアーでアレの記憶を消して今後も存在を認識しないよう書き込んでくれーーッッ ストリートファイターをまた気持ちよく楽しめるようになりたいよおーーッ

それで本題の映画です。ドラマ版は荒木飛呂彦の世界を見事に実写として変換し、時にはジョジョ本編のエピソードも取り入れる脚色に唸りました。漫画家である露伴がジョジョの中では日常的な社会人としての姿を描きやすくて、スタンドという概念を消したのも奇妙でありながらリアリティを感じられる世界に映った要因。まさしく岸辺露伴の創作術。しかし本作は日本映画で海外ロケした時にありがちなおのぼりさんな趣が強く、実際にルーヴル美術館でロケしてるのは凄いことだが観光案内のようで、ドラマにあったそこでキャラクターが行動している息吹きがなかった。それとフェルメールの未発表とされた絵。自分は絵心がないのでその技巧は分からないが、有名画家の名前で手っ取り早く物語に箔をつけようとしてるように見えてリアリティ軽視に感じる。こんなの原作にはない。クライマックスである絵からの攻撃は本当はもっと多くの露伴関係者が襲ってきてたのだが、本作は仁左右衛門だけでお金が用意できなかったのだろうか。この原作ですらこれ。日本映画の限界を感じる。

またせっかくの映画ならプロットもそれに応じた景気良いのが必要と思ったのか、ルーヴルから始まる窃盗団の陰謀があって、これもハリウッドとは言わないが韓国映画くらいの予算があれば様になっただろうが本作はみみっちく間延びしてて眠い。奈々瀬の真相も原作より悲劇性をこってりと描かれてて、日本映画の悪癖泣かせを浴びせられる。ドラマの良さを多くの点で殺されていた。

このシリーズを振り返って最大の功績と言えるのは荒木先生も気に入ってたが1度しか使わなかった泉クンをレギュラーにして、ジョジョ本編における康一、億泰、時には風変わりである露伴の要素も詰め込んだキャラクターとして用いたこと。彼女のおかげで露伴1人では膨らませにくい話にも幅を広げていた。ドラマはまだ続きをやってほしい。風刺とシャマラン的光景と善人の死は悼む真っ当な露伴を描いたスマホ虫のエピソードは是非見たい。それと本作で若露伴を描いたので、更にルーツを辿って杉本鈴美も上手く脚色してですね。吉良の扱いも出すにしろ消すにしろ本来の力量を発揮すればできると思いたい。