しの

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビーのしののレビュー・感想・評価

3.1
前作よりキャラクターがデフォルメされた上、メイン2人に物語上の目的やドラマがなく、ダラダラ喋りが増えてアクションは減少。予算が増えた分、録音や映像などベースの観やすさは向上したが、自分はやっぱりタランティーノってすごいんだなと思ってしまった。

観やすさの要因として、前作のツイ廃オタクノリがだいぶ脱臭されていたのも大きく、ここは素直に良かった。その分とある映画をイジるネタに振っているが、前作よりは自然な入れ込み方だし、あの映画も色んなコンテンツをネタにした作品なので、入れ子構造的な面白さがあった。

一方、キャラクター同士の「ゆるい」やり取りがかなり増えていて、今回はここにキツさを感じてしまった。自分は「当人にとっては至って真剣な状況」でこそ上質な笑いは生まれると思うのだが、本作はそれを志向しているようで、やはり状況として不自然すぎるので、やっていることは変顔と変わらない気がしてしまう。あとタランティーノと違うのは、「このシーンはもってここまでだろう」というラインを超えて延々と続けてしまう点や、カットの切り替えにテンポ感がない点、あるいは他視点への移行に面白みがない点で、ゆるいというよりただ弛緩している印象があり、もどかしかった。

アクションに関しては、クライマックスにリソースを集中させる作りが前作と同じで、むしろ「殺し屋コンビ同士がいつ戦うのか」でアバンから引っ張っている分、本作のほうがタメをしっかり作れているといえる。特に間合いを詰めようとし合うあのアクションなんて初めて見た。

ただ惜しむらくはそこに物語性がないことだ。今回も「現実の閉塞感を“殺し”で発散させる」という大枠はあるものの、各々のコンビが勝手に日常を送ってラストで交わるだけなので、特にちさと&まひろに物語上の目的意識がない。せめて「友だちが欲しい」的なフリがあればラストに繋がったのに。

あと、これどういう気持ちで撮ってんだ? という一貫性のなさも前作に引き続きある。今回は兄弟殺し屋コンビに感情移入をさせておいて、クライマックス手前で「ぶち殺せ」みたいな盛り上げ展開にしたり、アンビバレントな感情にしたいのか、にしてはそういうフリがないよなとか、リアクションに困る。

しかしこの作品を新宿ピカデリーの1番スクリーンで観れたのは感慨深い。ついにここまできたかと。どう考えても監督はTwitterもFilmarksもチェックしていて、そのフィードバックを着実に活かしているようなので、今後の「卑近な進化」が楽しみだ。
しの

しの