さとうきび

インフィニティ・プールのさとうきびのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.5
入場者特典で謎の仮面が貰えたけど、正直ステッカーの方が欲しかったです……。


ストーリー 7/10
序盤の退屈さが玉に瑕だけど、事故が起きてからは加速度的に面白くなる。リアリティが無さすぎて、細部に拘るのがバカらしくなるくらい振り切れているのがいい。倫理観や常識なんてドブに捨て去れ!
あとは、クローンやアイデンティティという複雑そうなテーマを分かりやすく落とし込んで作られているストーリーだなぁと感心しました。残念な点としては、登場人物が多い割には大した活躍もなかったので、エロ・グロシーンの嵩増し要因にしか思えなかったところ。


構成 8/10
主人公が加害者・被害者の境界線を反復横跳びして、立場が二転三転していくのがとてもスリリングだった。拳銃片手にヒャッハーしてると思ったら、気づけば処刑されていて、でもそれはクローンだから本人は手を叩いて楽しんでる、みたいな。揺さぶり方の振れ幅が半端なく、見ているこちら側まで情緒不安定にしてくる見事な手腕。ラストの急に鎮火していくような展開も好みでした。


演出 6/10
人間性の狭間で揺れる主人公の心理描写がとても良い。処刑される自分を見て思わずほくそ笑んでしまうところとか、下手なホラー描写よりも鳥肌が立った。麻薬でラリった描写は少し安っぽくてマイナス評価。クローンされるシーンといい、ぶつ切りアンドフラッシュバチバチな演出が多く、物理的な不快感があった。


オリジナリティ 4/5
『スワンプマン』や『どこでもドア理論』など、思考実験としてはメジャーどころなテーマ。映像化する上で、クローンを代わりに処刑するというショッキングな設定にしたのは非常に妙手だと思いました。


ジャンル性 4/5
ジャンル分けは難しいが、『ファニーゲーム』みたいな理不尽系ホラーだと思う。主人公が精神的にぐっちゃぐちゃにされる話。人を選ぶが、カルト的人気は出そう。クローンの手法は古き良きトンデモSFを踏襲しているが、ジャンルとして言い張れるほどSFじみてはいない。


映像・美術・音楽 3/5
「エキの仮面」のビジュアルが好き。蘇った死者みたいで、題材ともマッチしている。グロシーンについては、低予算なのかクオリティが低めなのが残念。映像については演出でも触れたが、わざと酔いや気持ち悪さを誘発するような撮り方が多く、弱い人は注意が必要。私は最初のグルグル回るカメラワークでダメでした。


キャスト 3/5
ミア・ゴスのための映画と言っても過言ではないくらい存在感が凄まじい。眉毛どこいったんだ。反面、他のキャスティングについてはあまり記憶に残らない感じ。主役のスカルスガルド、演技は良かったんだけど、イケメンでスタイルも抜群なので、売れない作家には全く見えない。ミスマッチだと思う。


個人的加点減点 なし
ストーリー的にはすっごい好みなんだけど、撮り方があんまりハマらなかった感じです。世間的にも多分評価が二極化する作品だと思うので、今後配信とかされた時が楽しみですね。