ビンさん

インフィニティ・プールのビンさんのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.0
デイヴィッド・クローネンバーグを父に持つ、ブランドン・クローネンバーグの最新作。
とはいえ、僕は彼の作品は初見。

スランプ気味の作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は妻エム(クレオパトラ・コールマン)とともに、リゾート地である南の島リ・トルカへやってくる。
そこで彼は、作品のファンだというガビ(ミア・ゴス)と出会い、彼女の夫とともに食事をし、夜のドライブに出かける。
が、運転していたジェームズは、誤って人を撥ねてしまうのだった。
リ・トルカの法律では、如何なる理由があっても殺人は即死刑となる。
悲観するジェームズにガビは信じられないこととを告げる。
それはリ・トルカでは費用を払えばクローン人間を作ってくれて、それを処刑の身代わりにできるということだった・・・。

このあと、ジェームズが巡る悪夢のような出来事は、現実なのか現実逃避したい彼の願望か。

物語は正直なところ、胸糞悪いシチュエーションの連続だが、観終わっていわゆる後味の悪い気分、というのは不思議と無かった。

何故その島ではクローンを作ることができるのか、という科学的な根拠は一切描かれず、故に描かれた物語はジェームズの幻覚(ガビにその島に伝わる薬草を勧められ、後半はトリップ状態のジェームズ)なのかどうかも曖昧となっている。

SFとサスペンス、そしてエロス。
これが渾然一体となって摩訶不思議な世界を作り出しており、もはや父親の肩書きは不要なほどにオリジナリティを持った監督、ブランドン・クローネンバーグである。

おそらくは、セレブのリゾート地での傍若無人な振る舞いへのアイロニーのようなものが作品から漂ってくるが、それとて本編が内包するテーマの僅かな部分に過ぎないのだろう。

それと、やはりインパクトという点では、本作でもミア・ゴスが強烈。
『X』、『パール』と同じく、エキセントリックな役柄が続くけれど、彼女自身メンタル的に大丈夫なのかと心配になるが。
既にこのジャンルではなくてはならぬ存在となってしまった。

鑑賞したユナイテッドシネマ橿原でも、入場者特典として、劇中に登場する奇妙なお面をいただいた。
ビンさん

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