このレビューはネタバレを含みます
『マイナス・ワン』の後だけに、実は凡庸に感じた。
もはや怪獣映画ではなくファンタジー。
ゴジラが「悪い怪獣をやっつけてくれる僕らの味方」的になってしまった昭和ゴジラの世界を最新技術で創り上げた作品だ。
アダム・ウィンガードも「昭和ゴジラの、飛んだり(ヘドラ)、ドロップキックしたり(メガロ)、踊ったり(怪獣大戦争)が大好きだったので、この昭和ゴジラの奇想天外感を現実的なものに変換できるか」ということに挑戦したと言っており、その意味では怪獣オタクとしてのアダム・ウィンガードの夢の結晶なのだろうな。
最初に出てきてゴジラに瞬殺された蟹の怪獣、食べ甲斐がありそうだったのに勿体なかったな〜(笑)
今回のストーリーの中心はコング。ひとりぼっちか(?)と思われたホロウアースには、地上世界の征服を企む悪のコング「スカーキング」がいた!という設定。
コング族、数多過ぎ! コングの希少価値が下がる。
ホロウアースの世界は、コングと比較する建造物がないから、サイズ感がわからなくて、スカーキングとの闘いもただの猿のボス争いに見えてしまう。ただこれ、なんか『ライオンキング』みたい。
ミニゴジラじゃなくてミニコング? まあ、このミニコングが後でキーにもなるんだが。
またホロウアースでの映像は全てCGなので、実写と言うよりは完全な3DCGアニメだ。
コング族だけじゃなくて、ホロウアースには巨大生物が群れでいるけど、ああなっちゃうとただの巨大な野生生物で「怪獣」ではなくなっちゃうんだよなぁ。この辺の「怪獣」という存在に対するこだわりって怪獣オタクだからなんだろうけど、一般の人には伝わるかなぁ? 『サンダ対ガイラ』みたいにスカーキングとの一騎打ちくらいにしておいてほしかったな。
モスラが怪獣たちを説得して巨大な敵と戦うといったくだりは『三大怪獣 地球最大の決戦』を踏襲してるのかな?
それから「成虫」のモスラが糸を吐くのはいかがなものか?
『ゴジラ』も『キングコング』も最初の作品はそれぞれリアル路線だったが、モナークの存在がユニバースを作り作品世界を定義づける度に、ストーリーへの制約も生まれ、独創性が失われていく。あたかも怪獣版のMCUのようだ。
今回初登場のお調子者だが頼りになるトラッパーは、ロック音楽と共に登場しピンチを救ったり『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスター・ロードみたいなノリ。まさか『ゴジラ』映画でKISS の ”I was made for lovin’ you” を聞くとは思わなかった(笑)。
ローマ、エジプト、ブラジルetc. 『007』のように世界を股にかけ、コロッセオやピラミッドなど世界的に有名なランドマークの前で怪獣同士が闘う観光映画の側面もある。
おもしろくなかったわけじゃない。それなりにはおもしろかったんだよ。ただ、あの『マイナス・ワン』見た後だと、ね。
アダム・ウィンガードは『マイナス・ワン』を見て、絶対「やられた」と思ったに違いない。日本人が作るゴジラには神格化されたところがあるが、ハリウッドの人たちにとってはいくら強くても「動物」だと思ってる気がする。
このモンスターヴァースはまだ続くのかなぁ? まだガイガンとか出てきてないよね? それとも『怪獣総進撃』かなぁ?
やったらまた見るけどね。でも山崎貴が撮るなら、そっちのゴジラの方が楽しみ。