ドント

福山市長に1日密着してみたのドントのレビュー・感想・評価

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 2022年。おもしろいけど、惜しいな! これは惜しい! 福山城400周年セレモニーが迫る中、市の宣伝映像をオファーされた映像制作会社のディレクター&カメラマン。撮れ高ゼロの市政映像に辟易していた直後、事故で市長が完全失神。折り悪しく来たご当地アイドルから勘違いされたことをきっかけに、すり替わって市長となったディレクターがどんどんやっていく、福山市公認のフェイクドキュメンタリー。
 ディレクター役は『コワすぎ!』の工藤こと大迫さんで、市長の威光を楯に注意や脅迫や暴力をやっていく。市公認なので違法行為の側面でぼかしてある部分はあれど相当に攻めており、福山市の器のデカさに感心しきりである。あと「市長の顔なんか誰もわかんねーだろ」という一点ですり替え展開を乗り切るあたりの思い切りのよさ。なお失神する市長は役者さんであり、本物の市長の顔はググると出てきます。
 とは言え本作、フェイクドキュメンタリー作品としてはいかにもぎこちなく、旨味が少ない。素材、役者、福山市公認の印籠をうまいこと生かしきれていない。見所は予告編にある箇所であらかた出てしまっている。導入の事務所のシーンは面白味に欠けるし、市長失神までの流れは再放送しなくていい。その他、どうにも要所要所での詰めが甘い。アイデアとキャスティングで満足してしまっている印象が拭えない。
 マネキンで殴打、商店街で発砲などが許されるなら、乱暴……とまでは言わないが狼藉は働いてほしかったし、福山市中心部のいろんなところを回ってほしいのである。なるほど福山市にはこういう場所もあるのか。そこでこんなモノを撮っているのか、と呆れることで沸く興味もあるはずで、商店街と喫茶店とデパートとお城だけではどうにも寂しい。ないの? 駅前とかに……なんかこう、目立つもの……無かったらすいません……
 クライマックスにはなかなかオッ! と思わせるものがあったけれども、それならもっとふさわしい舞台と装備があったはずで、もっと開けた場所で激闘が繰り広げられていたらさらによかったろうし、ディレクターや相手が移動しながらいろんなものを武器にしていたらより面白かったろうと思うのである。さすがの市もそこまでは無理、とは言わせない。やるんなら多少踏み外しても面白いものをやってほしいんですよ(ガンギマリの目)
 そんなわけで、もう数歩踏み込んだ上でヤスリで削った作品だったらなぁ、と悶々としながら観たのであった。これを許す福山市への好感度は上がった。心の中の良識のような部分が「いや……公の機関がこういうの……いいのかな……」と呟いているし、ヨソでも続々作られるようになったら世も末だとは思うけれど、まぁ、ね! 一本くらいなら、ね!!
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