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マダム・ウェブのnetfilmsのレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
3.8
 マーベル初の本格ミステリー・サスペンスという予告編の謳い文句がそもそも難ありで、これはMCUシリーズのフェイズ5に位置するマーベルの堂々たる新作ではなく、あくまでスパイダーマン及びSSUの世界観の中の1本と読むのが妥当だろう。とはいえスパイダーマンから最も遠いマダム・ウェブの物語ということで心配していたのだが、どうやら杞憂だったようだ。これはスパイダーマン及びスパイダー・ウーマンのプロトタイプ(オリジン)のような物語であり、蜘蛛が持つ不思議で特別な能力を有した蜘蛛人間たちの物語である。アメリカ・ニューヨーク。救命士として懸命に働いていたキャシー・ウェヴ(ダコタ・ジョンソン)は孤独を愛する女性である。その理由は冒頭の回想場面で明らかになるのだが、彼女を生んだ直後に亡くなった母親の死が遠因にあるのだ。ニューヨークという大都市である日、3人の女性たちと出会ってしまう辺りは極めてスティーブン・キング的なジュブナイルな閃きなのだが、そこからスパイダー・ウーマン3人をトリプルで召喚する手捌きには唖然としつつも賞賛を禁じ得ない。

 ニューヨークの街で、孤独を抱えた4人の焦燥がある日奇跡を起こし、同じ目的の為に立ち上がる。追手はスパイダーの超人的な力を搭載したエゼキエル・シムズという名のヴィランで、『預言者』や『ダゲレオタイプの女』で知られるフランスの名優タハール・ラヒムで、3人の逃亡者を猛追するのだが、9台のモニターに囲まれたプライバシー・ハック・システムが今となってはかなり馬鹿っぽい。当初は一枚岩ではなかった3人の未熟なスパイダー・ウーマンたちがキャシーというメンターに導かれるように運命の扉を開ける。基本的には『ターミネーター』シリーズのリンダ・ハミルトンばりの逃げるが勝ちばかりなのだが、彼女の少し先の未来を予知する能力のおかげで絶体絶命のスパイダー・ウーマンたちは何度も人生をやり直し、来たるべき未来への助走を繰り広げる。マダム・ウェブは原作では占い師であり老婆で、このようなアクション大作に出て来るほど若くはないのだが、そこに首脳陣が持って来たのがダコタ・ジョンソンで、シスターフッド的な連帯が女性たちを未来へ導くという物語の筋道も明瞭だ。

 ただ一方では今作はあくまで彼女たちが並行世界に飛び込むまでを描いた序章的な作品であり、アメコミ映画、スーパー・ヒーロー映画としては物足りないのも事実である。然しながらアダム・スコットが演じた名脇役の名前がベン・パーカー、そして今作で描かれる物語が2003年であることを考えると、bingoと思わず声を上げてしまう。
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