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君たちはどう生きるかのJINのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.4
(この世界で)君たちはどう生きるか。
この世界がどんなものか、人間がどんな存在かをただ表現している。この世界に生きる私たちを肯定してくれるようで、「こう生きろ!」という説教臭さはない🦜

戦時中に父親が叔母と再婚し、母の実家のお屋敷で暮らすことになった眞人が、青鷺に導かれ、怪しげな塔へと進んでいく。
眞人は実母への思いと己の弱さを抱え、叔母を疎ましく思うなどしていた。「悪意のある」ごく普通の人間です。

飛び立つわらわら。私たち人間は、雄大な世界、大きな流れの中で生まれ死んでいく命にすぎない。
この世界を形成する積み木。人間は世界を創造すべき使命など負ってはいない。人間は悪意に満ちているが、それでかまわないのだ。人間の無力さを痛感させると共に、我々へ救済を与えてくれる。それは、争いのある世界でもかまわないと言った眞人の言葉にあらわれている。
今作で大量に出てきた鳥たちは、敵ポジションでありながら、完全な悪ではない。わらわらを食べる鳥にも理由があり、生きようとする生命の集まりがこの世界であって、勧善懲悪へと走らないのが監督の魅力のひとつです。

宮崎駿のすごいところは、その独特な思想そのものではなく、それをアニメーションとして映像化させる表現力であると改めて感じました。
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