せびたん

君たちはどう生きるかのせびたんのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.5
めちゃめちゃおもしろかった。
映像きれいだった。やっぱジブリ最強。
過去作を読み解くヒントになるような事柄が満載って気がしたので、これはある意味、本人による宮崎駿読本なんじゃないかと思ったけど、実は私はジブリ作品をそんなにたくさん観てるわけじゃないので、このへんは不確か。
観たことあるのは、ナウシカ、もののけ姫、トトロ、千と千尋くらい。このへんの作品と本作には通底しているものがあった。終末の時は必ず訪れるという確信と、それを乗り越えたり、共存したりして生きるんだという強い本能?そんな感じのやつ。

いい映画を観てる時って、なぜか映画とは関係のないいろんな想いや考えが湧き起こっては消えていくんだけど、本作鑑賞時もそんな感じだった。何考えてたかもうだいたい忘れたけど、例えばこんなことだった。

生きてることとは、いつだって進行形の状況にすぎなくて、今という一瞬に燃えさかる炎や、泥にめり込む足や、屋根の上を歩く青鷺の足音が生きてることの実感だ。過去も未来もこの一瞬の空間に折りたたまれ、織り込まれ、この一瞬は一瞬でありながら永遠に等しいものとなる。自我というフィクションが消え、五感を通して身体に入ってきたものが、どこかへ流れていくという感覚だけがあるけれど、流れていくのはどこなのか分からない。たぶん分かる必要もない、みたいな。

自分も、子供の頃や若かった頃みたいに、もっと五感を使って人生を楽しもう。と思った。そういう感覚、忘れてたわ。
つーか80歳でその感覚維持してるの、すごくないか。もしかしてそれが普通なの?おれが失くしただけ?

そういや話は全然変わるけど、後期高齢者となった創作界のマスター達の作品に触れるたびに思うのだが、物と物の境界?が曖昧に描かれる傾向があるのは、あの世代になると物事の捉え方がそういうふうになっていくからなんだろうな。
本作では炎が描かれるシーンで、炎が周囲と一体化した様子で描かれていたのだけど、この感覚はその年齢に達した時に分かるのかもしれない。今は正直理解できない。歳を重ねるどこかのタイミングで、そういうふうに物事を捉えるようになるのだろう。自分も80歳になったら、世界がそんなふうに見えるのかも。今から楽しみにしておこう。
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