ゆめちん

658km、陽子の旅のゆめちんのレビュー・感想・評価

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
3.5
658km、陽子の旅
 
海外で賞を取ったのを聞き鑑賞。たまたま舞台挨拶付のチケットが取れ、菊地凛子や熊切監督の、撮影秘話や授賞式の様子などを聞けたので得した気分に。
 
42歳の陽子は独身で、非正規雇用で働いている。かつて自分の夢への挑戦に反対した父親が亡くなり、葬儀のため従兄弟である茂の車で故郷の弘前に帰ることに。ところが高速道路のSAでトラブルが起こり、そこに取り残されてしまう。
 
本作は、陽子が父の死により否応なしに過去と対峙する中で、自分自身を見つめ直しながら成長していく物語であるとともに、地元の人々との触れ合いなどのロードムービーとしての醍醐味もある。風吹ジュンや見上愛などの贅沢な使い方も見どころ。浜野謙太が出てきた時点で何となく嫌な予感がしたがその通りに。
 
"空の穴" から22年。菊池凛子扮する陽子が、"空の穴" で演じた妙子の20年後のように見えるから不思議。最初は "コミュ障" で全く喋らない陽子にじれったさを感じるが、それは逆に台詞ではなく表情や仕草だけで表現する、菊池凛子の演技力の素晴らしさだと実感。
 
主人公が厳しい環境に置かれながらも人の優しさに触れるにつれ、全く覇気のない表情から逞しい表情に変わっていく陽子が印象的。観終わると映画としての重厚感を覚えるのは、やはり主演女優の持つ力か。
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