強い

シック・オブ・マイセルフの強いのレビュー・感想・評価

シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)
3.4
なにもないシグネ。孤独のシグネ。恋人は人に囲まれるアーティストだけど、特別な才能も美貌もない彼女が「特別」になるためのたった一つ地獄への片道切符へ手を伸ばす。

承認欲求の地獄は誰をも少しづつ巻き込み、でも巻き込まれた人間は本人に聞こえないよう小声でに巻き込まれて居ないことを主張する。
彼氏は彼氏でアーティストを気取るだけの本当には偽物。真贋のできない眼が、憧れる眼がもう一つあるだけの偽物。この世は偽物だらけであるとも言える。
偽物の為に必死になる気持ちだけが本物。

きっと皆本物になりたかった。誰かに愛されたかった、それが正しいと言ってもらいたかったのに。
このぐじゅぐじゅと化膿した気持ちは、私達にも良く見覚えがある。シグネは勇敢にもやり遂げやがったけれど、そうしないまでも、何かと自分を特別にしたくてたまらない欲求はSNSをやっていれば理解に容易いことだろう。

なんと切ない話だろう。
手段は酷いものとはいえ、最早他人事では無い。引く事も笑う事も出来ない。
ただ己を重ねて呪うことしか出来ない。
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